Loving You

□オトモダチニナリマショウ
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夏休みが終わり、今日から新学期。

パパとママに見送られ、僕はホグワーツ特急に乗りこむ。


「じゃぁね、元気で」

「しっかり勉強しておいで」

「手紙を書いてね」

「困った事があったらすぐに連絡しなさい」


さっきから二人は僕にじゃなく、ましろに話しかけている。

言われる度に、ましろは、はい、と頷いた。


「あぁ、どうして来年からじゃダメなの?」


ママがましろを抱きしめた。


「アーシャ、スノウはホグワーツで勉強した方がいいんだ」


パパがママの肩をぽんぽん叩く。


「夏の間頑張ったから、セドと同じ学年に編入できる。喜ばしい事じゃないか」

「それはそうだけど………本当に大丈夫なのね?」

「はい。ちゃんと………出来てるでしょ?」


ましろが言う”出来てる”は”変身”の事。

1週間前から自分で1日中”スノウ”に変身できるようになっていた。


「………出来てるわ」


ママは少し残念そうに言う。


「アーシャ、私、ホグワーツでも上手くやれる。大丈夫だよ」


ママは名残惜しそうにましろから離れ、僕を見る。


「セド、あなたがスノウを守ってあげてね」

「分かってるよ、ママ。心配しないでよ」


一昨日辺りから一体、何度同じ事を言われるんだろう?

僕はママとパパに手を振り、ましろに手を貸した。

荷物は先にコンパートメントに入れてある。

僕達は列車が走り出すまで、窓際でママ達に手を振っていた。

二人の姿が見えなくなって、コンパートメントのドアを開ける。


「よ!久しぶり」

「ケルヴィン!!声をかけてくれたらよかったのに!」


僕達のコンパートメントには、ケルヴィンの他にマイクがいた。


「マイクも久しぶり!ダイアゴンでも会えなかったね」


二人には手紙で買い物に行く日を知らせていたので、ケルヴィンとは会って一緒にパーラーでアイスを食べた。

が、マイクはすれ違う事もなかった。


「うん。予定が狂っちゃって………その子は?」


僕はマイクの言葉で、ましろをドアの所に置きっ放しなのに気付いた。


「ぁ、マイク、紹介するよ。スノウだよ。僕の”妹”」


ましろはケルヴィンに手を上げて挨拶した後、僕の隣に立った。


「こんにちは。スノウ・ディゴリーです。よろしくね」

「ぁ、うん。マイク・アッパード。よろしく」


マイクはましろの顔を見たまま握手して、握手して、握手したまま手を離さない。

目も離さない。


「マイク?あの〜〜そろそろいいんじゃないかな?」


ましろが視線を握られたままの手に送ると、マイクはバッと手を離した。


「ぁ、ごめん」


少し顔を赤らめるマイクを見て、嫌な予感がした。

僕がケルヴィンを見ると、肩を竦める。

言っただろ?と、その顔は言っていた。

ダイアゴンで会った時、ケルヴィンはましろに聞こえない所でこう言った。


”スノウはきっと人気者になる。ボディーガードは俺にしろよ。”

”その必要はないよ。スノウは僕の妹なんだから、僕が守るんだ”


僕は、僕がその役をするように両親から言われている、と丁寧に断った。

マイクにも釘をさしといたほうがいいのかな?


「スノウ、こっち座れよ」


ましろの手をケルヴィンが引いた。


「ぁ、うん。ありがと」


ましろは何のためらいもなく、ケルヴィンの隣に腰を下ろす。

僕はその様子を見ていたマイクの隣に座った。


「二人は知り合いだったんだ?」


マイクはましろに聞いた。

が、ケルヴィンが答える。


「夏休みにセドリックの家に遊びに行った時にな。箒で飛び回ったよな?」

「うん。ケルヴィンのおかげで箒に乗れるようになったんだよ」


ましろが楽しそうに答えるのを、マイクがふぅん、と聞く。


「ゲームもしたよな。爆発カードゲームとか、ゴブストーンとか」

「あ〜〜ゴブストーンは1回位勝ちたかったなぁ。どうしてケルヴィンには勝てなかったんだろう?」

「あの嫌な臭いのする液体を顔に掛けられたくないからな」

「私なんか、やるたびに最後はシャワーに行かないといけなかった。マイクはゴブストーンゲーム強い?」


ましろは黙ったままのマイクに話を振った。


「ぁ、あ〜〜〜それ程強くはないかな」


マイクは必死に言葉を捜し出した。

ましろは、ぱぁっと笑った。


「そうなんだ?じゃ、今度やらない?セディは遊んでくれないんだよ」


ましろは僕を恨めしげに見る。


「しょうがないだろう?君が泣きそうな顔をすると、ママが怒るんだよ」


と言うのは、言い訳だけど。

ケルヴィンや僕が勝つと、ましろは半泣きでシャワーをしに部屋を飛び出した。

ケルヴィンはその顔も可愛いから、と相手をしてあげていたが、僕は嫌だった。

ましろにはいつも笑っていて欲しい。


「僕で良かったら、何時でも良いよ」

「良かったぁ。1回でいいから誰かに勝ちたいんだ。ぁ、でも、手加減とかナシね。ゲームは真剣勝負が面白いんだから」


マイクは頷いた。

ケルヴィンが面白そうにマイクを見る。


「マイク、スノウかなり弱いぞ。俺、手加減しても負けなかったからな」

「ケルヴィンがバカみたいに強いんでしょ?」

「まぁな。俺、ホグワーツの『ゴブストーン愛好会』のメンバーだしな」


ましろが驚いたように目を見張る。


「なにそれ………」

「ゴブストーンは魔法省の魔法スポーツ・ゲーム部に公式クラブチームがある位、人気のあるゲームだからね。

愛好会は山のようにあるんだよ」


僕はましろに説明してあげた。

ましろは、はぁ……と息を吐き、窺うようにマイクを見る。


「もしかして、マイクも愛好会のメンバー?」


マイクは困った様に頷いた。

ましろはケルヴィンを見る。


「私、勝てると思う?」

「さぁ………ムリだろうな」


ケルヴィンの答に、ましろは肩を落とした。


「しょうがないよ。今までやった事なかったんだから。練習すればいい」

「セディ、上手くなるのに、私は一体何度シャワーを浴びに行かなくちゃならないの?」


僕は答えに詰まって手を上げた。


「いい考えがあるぞ、スノウ」

「なに?ケルヴィン」

「最初からシャワールームで練習したらいい。相手は俺がしてやるよ」


服が汚れるから裸でな、と続ければ、ましろが呆れたような声を出す。


「全く。ケルヴィンの頭の中はかなり原始的なんだね。も少し”ホモサピエンス”に近づいたら、会話も成立するかも」

「つれないな。こう見えても結構モテるんだぜ?シンシアにマーガレット………」

「へぇ、勘違いじゃなくて?もしくは……相手が”人間”だって証拠は?確か家で犬飼ってたよね?」


ケルヴィンが天を仰いだ。


「負けた………」

「勝った!」


ましろが嬉しそうにガッツポーズした。


「セドリック、スノウってかなり毒吐くタイプだね?」

「うん。ケルヴィン限定だけどね」


二人の様子を見ながらマイクが僕にこっそり呟いた。

大体エッチな事を話し始めるケルヴィンを、ましろが窘める風で始まる。

僕とはあんな勝負にはならない。

何故って……ケルヴィンのような話はしないから。

もしケルヴィンと同じタイプの人間がいたら……いないと思うけど………同じ様になるのかも。

楽しそうにケルヴィンと話すましろを僕達は見ていた。




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