Loving You 2

□5年生
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夏休みが終わって、ホグワーツ特急に乗る。

セディが持ってくれてるトランクの中にはモノトーンの服ばかり。

シリウスの写真が載っている新聞も入れた。

アーシャ達は心配そうな顔をしていたが、私は笑顔で手を振った。

夏休みの間、家の周りで黒い犬は見なかった。

私達を探したかどうかも分からないまま。

多分……シリウスは忘れてしまったんだろう。

ママの言った通りだ。

私達は汽車が動き出してから、コンパートメントに向かった。


「ケルヴィンが取ってくれてるはずだよ」


セディがコンパートメントの中を覗いている。


「あぁ、いたよ」


思ったより前の方にケルヴィン達はいた。

セディがドアを開けて私を入れてくれる。


「久しぶり、二人とも」


私が入ると、二人は顔をしかめた。


「スノウ、そんな笑わなくていいんだぞ」

「そうだよ。僕達、君が大変な時に何も出来なくて………」


あぁ、ここでもだ。

アンジェリーナ達も最初はこうだった。

自分で決めた事とはいえ、なんとも辛い役回り。


「心配かけてごめんね。手紙ありがとう。嬉しかったよ」


二人は頭を振って、私に席を勧めた。

セディは荷物を片付けて、私の隣に座った。


「あ〜〜ホントに平気なんだよ。だから……普通通りしてよ」


私はセディを見た。

セディは、しょうがないなぁ、と言った表情で口を開いた。


「二人がそんな顔してたら、思い出しちゃって逆に辛い気分になるだろう?それより今年の主席、誰だか知ってるかい?」

「あぁ、グリフィンドールのパーシー・ウィーズリーだろ?」

「胸を張り過ぎて、後ろにひっくり返るんじゃないかって話してたんだ」

「あぁ、あり得るね」


セディが変えてくれた話に二人は乗っかってくれた。


「じゃぁさ、『DADA』の先生知ってるか?」

「え?!知らない。ケルヴィン知ってるの?」


マイクが目を丸くした。

ケルヴィンはニヤッと笑って、俺も知らない、と言った。


「なんだ。知ってるのかと思ったよ」


私が口を尖らせると、ケルヴィンは肩を竦めた。


「誰も知らなかったんだ。噂の一つも聞こえてこない」

「いい人だといいね」

「マイク、去年のアイツより最悪なヤツなんて、そういないと思うよ」


私の言葉にコンパートメントの中が笑い声で一杯になった。


「お?賑やかだな」


ドアが開いて、フレッドが顔を出した。


「久しぶり、フレッド。一人?」


私が手を上げると、フレッドは後ろを見た。


「ジョージも、もう来る」


そう言って私を手招きした。

ドアを細く開けたまま、入って来る気はないらしい。

私が席を立って行くと、フレッドはポケットに手を突っ込んだ。


「俺達、エジプトに行ってたんだ。その……知ってるかもしれないけど」

「うん。新聞を見たよ。手紙もくれたじゃない」


なんか言い難そうだ。

なんだろ?


「あ〜うん。で、スノウもくれたけど……書いてなかったよな?その………ママの事。アンジェリーナから聞いて驚いた」

「あぁ、せっかくの旅行、楽しめないかと思って………まずかった?」

「まずいって言うか、まずくないって言うか………」


フレッドは後ろを見た。


「ジョージ、俺、無理だ」

「じゃんけんで負けたのはフレッドだろう?早く!!」

「え?ジョージ、いるんじゃない。久しぶりだね」


私はフレッドの背中に声をかけた。


「あ〜〜スノウ、久しぶり」


ジョージがフレッドの肩越しに顔をのぞかせた。


「で?なんなの?」


二人は目で話しあい、フレッドが笑顔を作った。


「スノウ、これ、お土産」


ポケットから紙袋を出した。


「わぁ、ありがとう。開けても?」


フレッドは、勿論、と小さく頷いた。

私は紙袋を開け、掌に中身を出した。

出て来たのは、小さなブローチ。


「フレッド………二つあるよ」


多分………金で出来てる猫の形をしたそのブローチの一つは、両目にグリーンの石がはめ込まれている。

もう一つは目の色がブルー。

少しだけデザインが違う。


「あ〜〜ほら、その………スノウがママとペアで付けてくれたらって……それで……」


申し訳なさそうに言葉を探している。

………私は何てことしたんだか。

二人は私達の為に良かれと思ってこれを買ってきたのに、帰ってきたら私のママが死んでて途方に暮れた事だろう。


「フレッド、嬉しいよ。ジョージもありがとう。気を使わせてごめんね」


私はブローチをぎゅっと握った。

嘘吐くって、ホントしんどいや。

二人は頭を振った。


「ホントは一つにしようとしたんだけど……それ、元々ペアのブローチだからさ、まずいかなって………」


フレッドの後ろからジョージが教えてくれる。

私はブローチを見た。


「あぁ、ホントだ。体が組み合わさる様に出来てるんだね」


凸凹を組み合わせると、二匹の猫がぴったりと寄り添う。


「素敵なお土産。エジプトって、猫の神様いたよね?」

「おぉ、壁画見て来たぜ。えっと………」

「女神バステトだよ。太陽の女神なんだって」


またジョージが後ろから話す。


「ねぇ、入ってきたら?」


私が一歩下がると、フレッドは頭を振った。


「スノウ、後でエジプトの話はたっぷりしてやるよ」

「そろそろディゴリーの目が鋭くなってきたからね」


ジョージの言葉に後ろを見ると、セディがにっこり笑っていた。


「いつもと一緒じゃない」

「「一緒じゃない」」


二人は声を揃えて言った後、、じゃ、と手を上げた。

私はドアを閉めて席に戻り、貰ったお土産をみんなに見せた。


「きれいだよね」

「スノウはこのグリーンの方を着けたらいいんじゃない?瞳の色と同じだから」


マイクの言葉に頷いて、早速着けた。


「こっちのは………一緒に着けとこうかなぁ」


ママに渡すか悩む所だな。

もし、万が一ママが持ってる事がバレたら………恐ろしい。

私はもう片方も着けた。


「せっかくだしね」

「そうだね。二人の好意が詰まってる」

「うん」


それから私達はお昼を食べて、ゲームして、おしゃべりして過ごした。




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