Loving You 2

□敵or味方
1ページ/8ページ


私があれだけ言ったのに、マルフォイは頭の包帯を取らなかった。

腹が立ったので、ヤツを見かける度にヤツの前に見えない壁を作ってやった。

勿論、ぶつかる。

で、驚いた様に目の前を触る。

が、その時には壁を消している。

大広間や廊下でもやった。

それらの場所で魔法を使う事は禁止されているが、見つからなければ問題ない。

(と、勝手に決めた)

フレッドとジョージは私とヤツの間に立って壁を作ってくれる。


「また辺りを見回してたわ」

「スノウを探してるんでしょうね」

「フレッドとジョージが丁度いい壁なんだよねぇ」


私と離れてマルフォイの様子を見ていたアンジェリーナとアリシアの報告を聞き、その度に胸がすっとする。


「アイツのおかげで『魔法生物飼育学』の授業が全く面白くなくなっちゃったんだから、これ位しても罰は当たらないはずだよ」

「スノウ、マルフォイの包帯、どんどん分厚くなってるの知ってるか?」

「知らない。何それ?」


リーがニヤッと笑う。


「見えない壁にぶつかっても包帯が衝撃を吸収してくれんだとよ。もうすぐキャップのツバみたいになるってみんな話してるぜ」

「でも、頭の周りを巻いてるんだから………帽子だね」


一瞬だけ、クィレルのターバンを思い出すが、すぐに別の画が浮かんだ。

あぁ!

いい事考えたっ!!

私はその日の夜、持ってるカタログを全部ひっくり返し、マルフォイにぴったりのモノを注文した。

3日後、届いたモノを持ってスリザリンのテーブルに行く。


「おはよう、マルフォイ」


私はマルフォイの向かい側に座った。


「………なんだ?」


マルフォイはびくっと体を揺らした後、私を見た。

今日もマルフォイは包帯を巻いている。

リーが言ったように、包帯3巻分くらいを使って厚みを作ってる。


「この前酷い事言っちゃったから、お詫びの印に、あなたにピッタリのプレゼントを用意したんだ」


ごめんなさいね、と謝りながら、持って来た紙袋を渡す。

マルフォイは訝しげな表情を作ったが、紙袋をひったくった。


「気に入ってくれたら嬉しいんだけど………」


私から目を離さず紙袋の口を開け、袋を逆様にした。


「………これ、何だ?ドーナツにしては大きいし、食べられないな」


マルフォイは出て来たピンク色のものを摘みあげた。


「あれ?知らない?シャンプーハット。髪を洗う時に泡や水が目に入らない様に頭にかぶるやつ」


マルフォイは私に目を向けた。


「僕には必要ないモノだ」

「そうかな?毎朝包帯巻くの大変でしょ?取るのもね。これなら簡単にかぶれるし……

頭のガードにはもってこいじゃない?何かにぶつかってるって聞いたからさ」


これを言う為に、ウレタンの様な柔らかい素材でできたモノをわざわざ選んだ。

数人がぷぅっと噴きだした。

マルフォイは私を睨みつける。


「白々しいっ!お前がやってるんだろうっ?!」

「何を?」


私はとぼける。


「僕が歩いていると目の前に何かが現れてぶつかる。それはすぐに消える。お前がやってるんだろう?!」

「私が?どうして?こうしてシャンプーハットまで持って来たのに?」

「お前以外にやる人間に心当たりがない!」

「そうかなぁ?私はマルフォイに何かをしようなんて思ってないけど………”見えない何か”はもっと前からあったんじゃないの?」

「そんなものある訳がないっ!」

「だってあの時、頭ぶつけたって大騒ぎしてたじゃない。そうでしょ?」


マルフォイは黙った。

私は心配そうな表情を作る。


「ねぇ、マルフォイ。あなた、呪われてんじゃないの?それで何かにぶつかってるんだよ」


私はそこまで言って、はっ!と何かに気付いた振りをする。

マルフォイが、なんだ?と小さな声で言った。


「もしかしたら……いいえ。そんなバカな事ない。じゃ、私は行くよ。それ、使ってね」


席を立とうとすると、マルフォイは慌てた様に手を伸ばした。


「待て!最後まで言ってから行け」


私はしょうがないなぁ、と席に座り直した。

この頃には、私達の周りにいた人の耳はダンボになっていた。


「知ってるかどうか分からないけど……ヒッポグリフって賢い生き物なんだよね。人の言葉が分かるでしょ?」


マルフォイは頷いた。


「バックビークはその中でも特に賢い子だった。ハグリッドの事が大好きで………もしかしたら彼が恨んでるんじゃないかって思ったんだ」


あり得ないとは思うけど、と付け加える。


「それ………本気で思ってるのか?あの怪物が?」

「しっ!そんな事言って、バックビークに聞こえたらどうするの?」


私はその瞬間、膝の上に置いてた手をポケットの中に入れ、杖を握った。

5センチ四方の空気を固め、マルフォイの頭の上に落とす。


「いっ!何かが僕の頭の上に落ちて来たっ!!」


マルフォイは頭の上を摩りながら、何が落ちて来たのか?と辺りを見た。

私は勿論、周りの人間もそれを不思議そうに見る。


「マルフォイ、なにしてんの?」

「何って、頭の上に何かが…………見てないのか?」

「何を?」


マルフォイは周りを見るが、勿論誰も見ていない。


「………そんな……」


マルフォイは泣きそうな顔になった。


「もしかして嘴でつつかれたんじゃない?シャンプーハットじゃ頭の上は守れないね。ヘルメットにすれば良かったかな?」


もう私の言葉も聞こえてない様だった。


「じゃね」


私は手を振って席を立ち、グリフィンドールのテーブルに行く。

みんなはくすくす笑いながら私を待っていた。

アンジェリーナの隣に座ってご飯を食べ始めた。


「スノウ、見てみろよ!」


フレッドの言葉に指の先に目をやる。


「………あれ、何してんの?」


そこには包帯を取り、代りにシャンプーハットを被ったマルフォイがいた。

更にマルフォイは、頭の上に分厚い本を載せ、ボディーガードの子にそれを包帯で頭に括りつけさせていた。


「きっと上からの攻撃から頭を守ろうとしてるんだよ」


ジョージが笑いを堪えながら私に言う。


「バカだな」


リーがぽつりと零す。


「あそこまで行くと憐れな気さえして来た」

「じゃ、止めるの?」


アンジェリーナが首をかしげる。


「何を?マルフォイはバックビークの呪いを解く運命にあるんだよ」


私は杖を振り、マルフォイの頭の上に大きな空気の塊を落してやった。

本を通してもその衝撃は伝わったようで、ふらついている。

………一々作るのはめんどくさいな。

時限式で塊か壁を現すようにしよう。




時間を見付けて、ロンと話す。

話題は勿論、スキャバーズの体調の事。


「そっか………まだ回復しないんだね」


私はスキャバーズの体を撫でながらロンに聞いた。

スキャバーズは体を震わせている。


「スノウがくれた餌も食べないくらいさ」

「あ〜〜じゃ、今度『超!高級・ネズミの餌』と『老ネズミ用栄養ドリンク』を買ってみようかな……」

「スノウ、ありがとう。スキャバーズの事をそんなに気にかけてくれるのは君位だよ」


ロンはスキャバーズに目を向けた。


「………この子まで死んじゃったら悲しいから」


私は理由を捻りだす。


「君の猫はどのくらい生きたんだい?」

「ん〜〜4、5年くらいかな?まだ若かったのに………首輪してなくてさ。野良ネコと間違われて捕まって……処分されたんだ」


ロンは息を呑んだ。


「そんな!………ごめん。辛いこと思い出させて」

「いいんだ。ここに来てパーシーがこの子の名前を呼ぶのを聞いた時は、運命だと思った。きっと、巡り会う運命だったんだよ」


私がスキャバーズの鼻先を突くと、スキャバーズは震えあがった。


「具合悪いんだね。震えてる。……私、注文して来るよ」

「ありがとう、スノウ」


ロンにスキャバーズを返して私は部屋に戻った。

かなり憔悴してる。

シリウスの事と、私が”ましろ”だと気付いたからだ。

ジョージが、家族中で君の写真を見た、と言っていた。

多分、スキャバーズも見てる。

それでも逃げないのは……私が真実を知らない、と思っているからだろう。

ママが言ったように、今逃げられたら面倒だ、とは思う。

でも何時でも動きは押さえられるんだから、しばらく放っとこう。

注文書を書き、ハリーにふくろうを借りに行った。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ