居候と僕
□ハハと居候
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忘却術が成功していたとアブラクサスから返事が入ったのは、次の日のふくろう便。
ましろにも伝えると、良かったと言って、早速返事を書き始めた。
休暇中は文通をする事にしたらしい。
それから数日後、僕が課題を仕上げていると、突然、あっ!!と大きな声を出して、オブシーを呼び出し、ちょっと出てくる、と言って、一緒に行ってしまった。
またお風呂かな?
ましろはお風呂が好きみたいで、よく出かける。
しかも長い。
たまに髪が濡れたまま帰って来るので、杖で乾かしてやる。
その度に、ちょっと悲しそうな顔になるのは不思議だが、訊くと泣きそうなので、我慢している。
ましろが出て行って、どのくらい経ったのか?
突然じゃぁ〜んっと効果音つきでましろが帰ってきた。
「お帰り、ましろ。うるさいよ」
羊皮紙から目を離し、声の方を向くと、テーブルの上には、ケーキと、ご馳走の山。
何事だ?
「ましろ?これは」
「誕生日おめでとう!ヴォル!!何も用意できないから、ケーキ作ってみました!」
「誕生日?僕の?何で知ってるの?」
「最初に会った時に教えてくれたでしょ?座って。二人だけど、パーティーを始めましょう」
ましろに手を引かれ、テーブルに向かう。
「さぁ、どうぞ。待って、お祈りする事考えて。………いい?じゃぁ、歌うわよ」
決して上手いとは言えないハッピーバースデートゥーユーの後、お祈りしたら、ろうそく吹いて!と言われ一息で火を消した。
「おめでとう!あなたが生まれてきた事に感謝!!」
そう言ってグラスを揚げるましろに、ありがとうと言って、同じようにグラスを揚げた。
「たくさん食べて!結構がんばって作ったんだから。まぁ、口に合わなくても食べてね」
そう言って、ましろは自分も食べて飲んで、大はしゃぎだ。
グラスの中身はお酒じゃないのに。
パーティーの時、一口飲んだだけで頬を染めたましろは、いつもよりきれいだった事を思い出す。
お腹いっぱいになった頃、ましろが、グラスを揚げた。
「ヴォルのお母様にも感謝を。ヴォルを産んでくださってありがとうございます」
僕はどうしていいか分らなくて、グラスを持つだけにした。
祈ったのは、君と過ごす未来。
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