11/23の日記

23:48
ばか卒業
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脳への電気刺激が数能力を高める?
Ker Than
for National Geographic News
November 8, 2010

 痛みを感じない程度の電流で脳を刺激すると、数学の能力を活性化できるとする研究結果が示された。“数学の失読症”とも言われる算数障害など、中度から重度の数学的な障害を長期間改善できる可能性がある。

 イギリス、オックスフォード大学の神経科学者で今回の研究を率いたロイ・コーエン・カドッシュ氏によると、この学習障害を抱える人は単純な数学的概念さえ理解できないという。「学習障害者の治療がわれわれの目的だ」とコーエン・カドッシュ氏は話す。

 実験では経頭蓋直流電気刺激と呼ぶ、外部から間接的な刺激を与える手法を用いた。健康な大人のボランティア15人が学習課題に取り組む間、頭皮に取り付けたパッドから脳に弱い電流が流される。実験は6日間にわたった。

 標準的な数学の能力を持つ被験者たちはまず、9個のばらばらな記号を頭の中で数値と結び付ける訓練を受けた。コーエン・カドッシュ氏によると、子どもが初めて数値と数字を結び付ける際の学習プロセスを模倣することが目的だという。

 被験者たちは1日1度の訓練の間、20分にわたって頭頂葉への電気刺激を受けた。頭頂葉は数字の処理に欠かせない脳の部位だ。「算数障害者は、頭頂葉に不活性や構造の異常といった問題を抱えている」とコーエン・カドッシュ氏は説明する。

 被験者たちは訓練の後にテストを受けた。本来は子ども時代に受けるテストで、その後の数学の成績と相関している。

 あるテストでは、あらかじめ覚えておいた記号のうち2つが画面に表示される。「2」を表す記号と「4」を表す記号だとしよう。ただし、「2」の記号は意図的に大きく表示されている。その上で、研究チームはどちらの“数字”が物理的に大きいかという質問を投げ掛けた。

 コーエン・カドッシュ氏によると、数学的な能力が正常な人はこの課題に悩み、小さな子どもや算数障害の人は難なく解答するという。正常な脳では、記号の大きさと数字の評価という異なる思考プロセスが互いに干渉し合うためだ。

 被験者の脳に電気刺激を与えると、不正解の「4」と答える率が上がった。つまり、数学的な能力は向上したことになる。「わかりにくいかもしれないが、間違える率が上がったということは、数字を表す記号が被験者の頭にしっかり定着したことを示唆する。つまり、電気刺激が数学的な能力を向上させたのだ」とコーエン・カドッシュ氏は解説する。

 6カ月後、同じ被験者に再びテストを受けてもらったところ、驚くことに、相変わらず課題の正答率は低かった。“向上”した能力はまだ残っていたのだ。「ほんの少しだけ効果が弱まっていたが、前回のトレーニング後とほとんど変わらない」とコーエン・カドッシュ氏は述べた。

 電気刺激が特定の知的能力を高める仕組みについては、まだ十分に解明されていない。ただし、一つの可能性として、「神経伝達物質」と呼ぶ脳内化学物質に電流が作用すると考えられる。

 いずれにせよ研究チームでは、この発見が算数障害者だけでなく、脳卒中や神経変性疾患のために数学的能力が低下した人の助けになるのではと期待している。

 ただしコーエン・カドッシュ氏は、発達障害のない人の脳を定期的に電気刺激すれば、倫理的な問題が生まれかねないと懸念も表明している。例えば、障害のない普通の人が数学的な能力を高めるために自分の脳を刺激すれば、不当な優位性を手に入れることになるかもしれない。「倫理的に見過ごしにできない難問だ」。

 今回の研究結果は11月23日、「Current Biology」誌で発表される。

Photograph by Fred Hossler/Getty Images

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