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□Cry Day
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「で、香璃、どうしたってんだ?」
「今の部下に、私は過去を語りたがらないって言われたわ。部下に悟られるくらいに、わかりやすかったのかしらって思って。腕がおちたのかしらね?」

私がクスクスと笑うと怜遥は眉を顰めた。

「香璃、誤魔化すなよ。あんな意味深な問いを投げかけておいて。それとも、なんだ、暗部に戻る気になったのか?」

現在も暗部として忙しく任務に明け暮れるシカマルの期待の眼差しが私に集まる。
 昔は、彼と怜遥と私。3人でチームだった。ビンゴブックにも載らない、誰も知らない零番隊として、木の葉を守っていた。
彼がいなくなって、私は暗部をやめてしまったけれど。
 私はゆっくりと首を横に振る。そして、決意し引き締めた唇を開く。



「私ね、―――行こうと思うの」



一言だけ。
でも、彼には意味が通じたようで一瞬、はっとした後、シカマルは「そうか」とだけ呟く。

「私が暗部をやめたのは、あの人が“居た場所”にいたくなかった。だって、あの人は私に来るなと言って消えてしまった。でも、私は行きたかった。あの人と一緒に」
「それは、俺も同じだっての ……だから、俺はアイツを探すために暗部を今も続けている。たとえ、それが意味の無いことだとしても、だ。それに、あいつが護っていた里を護りたい。だから、香璃……」
「わからなくなっちゃったのよ! あの人は私の、道標だったんだから」

 いつも私は彼を見ていた。
初めて会ったときから、私にとって彼は道標だったのだ。私はいつも迷っていたけれど、彼が居たからここまで来れた。

だけど、彼は――道標――は消えてしまった。
わからなくなった。
どうしたらいいのだろうか、と情けないけれど、不安で不安で仕方が無い。彼を追おうにも、彼は来るなと言った。彼がいなくなるときも、何も出来なかった。
そして、今も―――。
それから、私は暗部をやめた。
私は立ち止まってしまったのだ。
目の前を歩き続けていた彼は、私を置いて行ってしまった。道標を失った私は、もう歩くことは出来なかった。
 それから4年だ。長かった。長すぎたほどだ。今の私は、そう言える。

「私は、立ち止まりながら。それでもどこか彼を追っていたわ。彼が大切で、大好きで、心のうちから彼が消えてしまうことがとても怖かった」

だけど、知らぬうちに視線は彼を探して彷徨う。彼の面影を探して、里中を意味も無く見渡す。
私は立ち止まっていたけど、心はもう決まっていたのかもしれない。
ただ、踏み出せなかっただけ。彼が「来るな」と言ったから。

「やっと決心できたのよ。臆病で、自分ひとりじゃ道もわからなかった私だけど。開き直るのが早い私らしくないほど、長く迷ってたけど。―――私は、彼を追う」

 思えば、彼の言葉に素直に従ったことなんて任務時以外ほとんど無かったわ。
だったら、今回だって従う必要なんてなかったのよ!




* * *





 いつか。いつか―――会えるときまで……


 って、そんな悠長なこと言ってらんないわよッ。
進みなさい、私。何の為に足があると思ってるのよ? 決まってるじゃない、あの人と――ナルト――と一緒に歩くためよ!


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