story

□求め合う時
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夕方。夕陽が暮れ始めて、
少しずつ藍色に向かう空の下。
秋山は仕事を終えて、すぐに直に会いに来た。
すごく疲れている様子
だった。しかも、夜、
また用事があるらしいけど、
それでも最近会えていなかったから、
頑張って来てくれた。
二時間くらい、最近
の出来事や他愛の
ない話をした。
それだけでもう彼の
次の用事の時間が
近くなっていて。
直の方からそろそろ.....
と促した。
(ほんとは、このまま
ずっといて欲しい....
出来れば触れ合ったり
とかもして。)
けど、それは秋山の
為にならない。
秋山も同じ気持ちで
いたけど、また今度、
と自分に言い聞かせて
玄関まで進む。
ドアを開けた時、
覗けた空はもう夜空。
暗さが直の心に射し込む。
次にひんやりと風が入り
込んで、二人の別れを
更に辛くさせる様だった。
秋山が、名残惜しむ様
に直の唇に指で
そっと触れたけど、
唇を合わせる事は
しなかった。
(それで正解だと思います。)
キスなんてしてしまったら、
もっと離れずらくなるから。
直にもわかりきっていた。
けど、それでも彼を、
そして熱を、欲してしまう。
彼を見送った後も
部屋の中に彼の匂いが
少しだけ残っていた
から、それに後押し
される様に彼女は
足りない熱を自分で
補い始めてしまった。


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