story

□アルコール一杯 U
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秋山はずっと考えて
いた。仕事中も、帰宅
してこうして部屋に
いる時間も。明かりも
点けずに考えるのは―
どうしたら直の宅飲み
を阻止出来るか。
酒の入った彼女が、
どうなるかは知らない
けど、普段以上に無防備
になるに違いない。
そんな彼女に、自分以外
の男が一つ屋根の下で
近寄るなんて、可能性が
発生するだけでも
耐えられない。
けど、複数の人間の
関わるイベントを、
自然に中止にする方法を
探すのは、元天才詐欺師
にも難しい。そろそろ
夜が迫っていて、
宅飲みが始まって
しまうから、急いで
結論を出さなければ
いけなかった。
焦る秋山。
その時、ケータイが
鳴った。
「メールだ」
直からのメールだった。
‘昨日、調子が悪い
って言ってましたけど、具合良くなりましたか?’
どうやら体調が悪い
ととらえてくれていた
様で、心配してくれて
いる。画面からでも、
彼女の心配そうな顔が
簡単に想像出来た。
そして秋山はこの
優しさにつけ込む事を
思いついた。
‘まだ調子悪い。
仕事は行けたけど、
帰ってからずっと
寝てる。’
良い返事を送れたと
思う。きっと、これで
直は心配のあまり何か
力になろうとするに違いない。秋山の策は
正しくて、すぐにまた
彼女からメールが来た。

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