story

□もう引けない
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「はく」
滑稽な音の息を漏らし
ながら、それでも直は
秋山の舌を受け入れて
いた。かすかにタバコの
味がするそれは、彼を
リアルに感じさせて、
直を興奮させた。
そして、ぬめる肉厚な
舌が、やらしく絡む
感触は、彼女を快楽の
中へ引きずり込んだ。
一方、秋山は後悔し
始めていた。こんなキス
になって、驚かせて
しまった、と。
ピタリと舌の動きを
止めて、ゆっくり唇を
離す。長時間キスを
続けてしまっていた
から、直の唇の感覚が
麻痺して、だらしなく
開いたままになった。
その唇が誘っている
みたいで、せっかく淫ら
な空気から抜けられた
のに、秋山はそこに親指
を差し入れた。直は、
どうしたら良いか
わからなくて、せめて
噛まないようにと、口を
もう少し大きく開ける。
それを見て、やっぱり
彼女にはまだ色々と
早いと思わされた。
さっと指を抜いて、
そのまま唇の端の唾液を
指でぬぐってやると、
今度は本当に直から
離れた。
「悪かった。もう帰る。」
これ以上同じ密室の中に
いたら、また交わって
しまう。帰らなければ
と思った。
「....そんな」
呆然とする直。
「私、間違ってました
か?よくわかってなくて」
「違う。お前は悪くない。」
今度は意味がわからなく
て、いきなり彼が遠くに
感じて、目が潤む。
自分が原因でこんな状況
になって、罪悪感に
襲われた秋山は、気持ち
を正直に話す事にした。


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