story

□風邪を引いた
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秋山は耳を疑った。
いつも向こうから自分の
連絡を求めるのに、
会うと嬉しそうにするのに、
一体なんでそんな
言葉が出るのか。
彼女の体調は見るからに
とても悪そうなのに、
秋山に側にいて欲しいと
思わないのか。
家族でも恋人でもない
人間に、風邪の時にいられると、
気が休まらない、とか?
秋山が黙って考えていると、
直が意を決した様子で
ベッドからパジャマのまま
起き上がり、秋山を玄関まで
弱々しくも追いやった。
「なんでそんなに帰したがる?」
本当にわからなくて、
聞いてみる。直は、少し
口を開けて、答えようか
どうか悩んでいる様だった。
しかしきゅっと口を引き締め、
「帰って下さい」
とだけ言って、秋山を
ドアの向こうにやった。


全く意味がわからない―。
自分は嫌われてないはず
なのに、彼女があそこまで
かたくなに自分を
追い返すなんて。しかし、
何か食べ物を買って戻れば、
受け入れようと思うかも
しれないと思った。
初めて会った時、彼女が
嬉しそうに食べ物を食べていたから。
どうせ今日はろくに食事をして
ないだろうし。
当時食べてた物を買って、
秋山は戻った。
「ほら、食べ物だぞ。」
「......」
直は枕元に置かれた
食べ物を見つめ、
辛そうに語り始めた。

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