story

□風邪を引いた
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「秋山さん、私、今
秋山さんに側にいられると、
後で辛くなるんです。」
「こうやって優しくして
くれたら、これからも風邪の
時はこうしてくれるかも....
って思っちゃうし、
それって秋山さんが私の事、
知り合い以上に思って
くれてるって、思っちゃうし、
でもそれって勝手な
期待だし.....」
「メール、毎日送って
たのは、返事が返ってきたら
その日は素敵な日って
位というか.....」
「とにかく、だから帰って
欲しかったんです。」
どうやら、勝手な期待をして、
後からがっかりするのが
嫌だから、という事らしい。
なるほど、彼女らしい
臆病な考えだ。
やっと理解して、そこから
話が展開する。
「.....それって俺が、恋人に
なれば良いんじゃないの?」
「え」
「それじゃダメなの?」
「や」
淡々と彼は言うけど、
直にはついていけない。
「えーと.....秋山さんが
私の事、好きならアリかも
しれませんけど.....
私、秋山さんに好かれるような、
女の人じゃなくないですか?」
「だったらここまで
してないから。」
一度追い返されても、懲りずに
また戻って来るなんて。
「俺は何とも思わないヤツに
ここまでしないよ。」
「わかる?」
強めに聞くと、直は怯えて、
二回うなずいた。
「そーゆー事だから、
大人しく世話されな。」
彼が、食べ物のパッケージを
次々と開けて、直に差し出す。
あーん、というヤツだ。
戸惑いながらも、彼女は
小さく口を開けて食べ始めた。

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