story

□アルコール一杯 U
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‘すみません、昨日
寒い中、送ってもらった
から。私、今から
食べやすい物作りに
行きます!着くのに
けっこう時間かかると
思いますけど、待ってて
下さい。’
思い通りだ。直は
心配と責任感から、
秋山の部屋まで来る
事になった。一時間
かけてやって来た
彼女は、ベッドの枕元
に来ると、まず申し訳
なさそうに謝った。
「本当にすみません
......。着くのも
時間かかりましたし
....。」
「いや.....」
秋山の良心の呵責に
触れたけど、彼女の
安全の為でもあったし、と思う事にする。
その恐れていた宅飲み
は、彼女によると中止
にはならなかった
らしい。けど、彼女の
部屋を貸す形で彼女
抜きに始める事になった
とか。秋山の部屋に着く
のが遅れたのは、宅飲み
のメンバーに鍵を渡しに
行ってから来たから
だった。
「自分がいない部屋に
友達だけ入れるのは
ちょっと抵抗ありました
けど....仕方ないです
ね。いきなりみんな
飲めなくなるのは
ひどい話ですし。」
「ごめんな。」
「いえ!じゃあ私、
早速ご飯作りますね。」
直はキッチンに向かおう
とした。それを秋山が
すかさず止める。
「待って!もう少し、
横にいなよ。」
直は予想外の強い
言葉に驚いたけど、
そろそろと枕元に
戻った。思えば、
体調が悪い時、心細く
なる事は誰でもよく
ある。彼女は一人で、
それだ、と納得した。
「わかりました。
側にいますから、
大丈夫ですよ。」
そう言って秋山の
額を一回だけ撫でた
小さい手は、なめらかで
温かかった。



Vに続く。

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