story

□二人の夜
2ページ/2ページ



「......こういう流れで
初めてのセックスをする
のはイヤ、って事か」
「はっきり言わないで
下さい!」
彼女は遠回しに、ブラと
ショーツがセットの物
じゃないとか、まだ覚悟
が出来てないと表現した
のに。
「だって秋山さんは、
それほど構えなくても
良いかも知れません
けど、私は初めてで....
しかも秋山さんと
だから、万全の体制で
挑みたいんですっ」
「あはははははっ」
「もうー笑うなんて
ひどい!」
直は傷付いたけど、
秋山が笑ったのは、
決してその心構えが
原因ではなかった。
彼は特に直を抱く気は、
まだなかったのに、
直が敏感に受け止めて
勘違いしたから笑った
のだ。
「覚悟ね。いるだろう
からな、まだ待つつもり
でいたよ。オレだって
お前の初めて、大事に
したいしな。だが、
ベッドが一つしかない
から、一緒に寝る
くらい、良いだろ?」
秋山の優しい声に、
直の心がほぐされる。
「なら、大丈夫ですよ。
なんだ〜なんか、それは
それで、嬉しいけど、
ちょっと拍子抜け
しちゃいました」
「そんな事言って良い
のか?」
「あっ」
二人の目が合い、
クスクス笑い合う。
そしてこの夜、話し
合った通り、二人は
ただ一緒にベッドに
入った。スヤスヤと
眠る直の横から、
悩ましいつぶやきが
漏れる。
「オレがこんなに辛く
なるとは....」
伝わってくる、直の
温もりと匂いで、
興奮して眠れない秋山。
―少しだけ触れてみよう
か―いや、止まらなく
なる可能性が高いから、
ならいっその事、触れ
ない方が良い。でも
やはり辛いし、少しだけ
触れてみようか―。
思いが行ったり来たり
して、この夜は、嬉しい
けど同時に苦痛も感じ
る、眠れない夜を過ごす
事になったのだった。


前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ