story

□四人でカラオケ....後編
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相変わらずの調子に
フクナガがツッコむ。
「期待してたのにそれ
なくね!?全部それで
済むなら誰も苦労―」
「ちょっ、フクナガ、
ナオちゃん寝てるから
....」
「ハ!?」
アカギの信じられない
言葉に、フクナガが
聞き返したけど、鋭い
視線で確かめると、
本当に彼女は寝ていた。
「マジか....いくら
抑揚のない、単調な
音だとはいえ....」
「多分オールなんて
慣れてないだけじゃ
ないかな?途中まで
聞き惚れてたから....」
二人が途中から声を
ひそめて、そう話して
いると、不評だったこの
歌は、やっと終わった。
「おい....今までの期待
返せよ....ナオだって
寝たくらいだったんだ
ぜ」
実際、彼女が寝た原因は
定かではないけど、自分
の納得のいかない気持ち
を、こうしてフクナガが
伝える。
「あぁ、こいつ徹夜で
遊び歩く事はないらしい
からな」
少しもひるまない秋山。
更に彼は、こう言った。
「俺はこのままこいつを
寝かせてから送る。
お前らもういいぞ」
これには二人共絶句。
口を動かす事が出来る様
になったら、何を
どれだけ言ってやろう
か、アカギさえも考えた
けど、もう彼の為に
気力と体力を使うのも
バカらしくなって、
大人しく帰る事に。
二人が去ったのを確認
して、秋山は直の横に
移動した。
「....子供みたいな寝顔
だな。」
少し眺めて、そっと肩を
倒すと、膝の上で寝かせ
てやる。小さな頭が
愛らしくて、そっと髪を
撫でた。この夜はもう、
このまま穏やかな気持ち
で二人、朝を迎えられ
そうだ。そう思った。
そこで―
「あき....まさん、
すき」
「..........」
突然の寝言。これが
正気の発言だったら、
自分の気持ちもやっと
打ち明ける事も出来て、
きつく抱き締めるくらい
はしたのに。いきなり、
かなり辛くなった。
「まぁ良いよ、お前が
こんな俺で良いって、
決心着くまで、待てる
さ」
つぶやいて、彼も少し
休む事にした。二人の
寝息が、PR映像の音に
混じる。珍しく若者
らしい、甘酸っぱい
夜は、こうして幕を
閉じた。



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