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□クジャクアスター
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深夜の公園。久し振りに非番だった今日はジムに行き、汗を流した。気が付いたらこんな時間で、足早に帰路につく。


その時、とてつもなく大きな音が聞こえた。音がした方に意識を向けるが、離れているのか目視は出来ない。
俺は急いで駆け出した。


暫く道幅の広い園内の道に行き当たる。夜の闇に目を凝らしてよく見ると、座り込んでいる女性と、その正面に立っている男。

(…、鉄パイプ?)


男の手にしているものに気が付いたとき、男は両手を振りかざしていた。


咄嗟に駆け出した俺は、女性を背中に隠すようにして二人の間に割って入った。

「あぁ?誰だよ、お前…。」

鉄パイプを右腕で受け止めた俺に男が言う。


かなり興奮しているようで、男は訳の分からない事を言いながら鉄パイプで俺に殴りかかってくる。単調で、通り一辺倒な男からの攻撃を俺は流し続け、よろけかかった所を見計らって、男の手から鉄パイプを蹴り飛ばした。

「っひぃっ!!」

と、情けない声を上げた男は飛んでいった鉄パイプをそのままに公園の茂みの中に掛けていった。
俺は後を追いかけようと思ったが、女性がいたことを思いだし向き直る。

俺が近づくとその女性は勢いよく立ち上がった。


「あ、あの助けてくださって、ありがとうございましたっ」

流石にまだ今の出来事が残っているらしく、調子狂いな言葉だったが、大きく俺に頭を下げた。

───その時、微かな酒の匂いと…ふわっと辺りを包む香り。香水の様にしつこくなく、洗剤などのように人工的でもない。
自分でも驚いたが、頭にはてなが浮かんだ。


「あの、おけが、大丈夫ですか?されてませんか?」

おずおずと見上げながら近づく女性。するとより一層香りは濃くなった。
何だろう、これは…。知っている、でも…。

また一歩近づかれたとき、俺の心臓が僅かに跳ねた。
分からない。


「あの…?」

不安げに近寄ってくる女性に、怪我をしていないことを伝えようと首を横に振る。







気がつけば俺は来たときの道を走り、帰っていた。



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