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□クジャクアスター
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クジャクアスター



コツン、コツン、人気無い夜の路地に響くヒールの音。私は今まさに幸せの絶頂期!不安もないし不満もない。まぁ、確かに今日会った友達みたいに彼氏なんて人はいないけど、前のアイツを考えたらいない方が断然嬉しい!
学生時代に仲の良かった友人と、美味しいもの食べて、飲んで、散々騒いでやっとの帰路。日付を跨いで遊び呆けてしまった私は、酔っていることも相まって早く家に帰りたかった。
こんな時間で人気は無いけど、灯りの確りしたこの公園は家への近道。普段なら少し怖いと思うその公園も今の私には関係ない。
公園の真ん中を横断するように通っている一本道もあと半分。その向こうには私のマンションもある住宅街。時間と暗さとは裏腹に私の足取りは軽くなる。



────その時だった。

ガッシャァンッ!とけたたましい音と共に激しく揺れる緑のフェンス。私は思いっきり肩を跳ね上げて後ろを振り向く────と、1つの人影。
黒い服を着てるのか、全身真っ黒に見える、まさしくその影は右手に何か長いものを持ち引き摺っている。

───ガッッシャアンッ!!
またさっきの音。私は肩をすくめ、顔を反らす。
男はその後も右手に持った長いものでフェンスを殴り付けながら私に近づいてくる。
私はその場から動くことが出来ずに思わず尻餅。

私は恐怖から目をつぶり耳を塞ぐ。

ガシャンッガシャンッガシャッガシャン

不意にその不快な音が止み、私は徐に目を開ける。


「……っ!!」

私は息を飲んだ。
目の前に影が差す。

男は大きく腕を振りかぶった。

避けることが出来ない私は、悲鳴も上げれず体を丸め目を固く閉じた。






「(………あ、れ…?)」

暫くしても………痛く、ない。

私は不思議に思い目を開ける。







でも目の前は、真っ暗だった。




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