勿忘草

□危なっかしい噂
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ひたすら、その罪歌と名乗るハンドルネームの主は、母の望みだの静雄先輩を愛するなどの言葉をつぶやくと、チャットから退出した。



私は、そのチャットの様子を気味悪いと思いながらも静かに見続けた。





「だから何でお前が夜遅くまで俺を探すんだ?」


『会いたいからですよ。』


笑顔を浮かべて私は、車を停車させていた。

あれから日本での免許を取得して初心者マークを車につけてよく運転をする。


「ったく。」


呆れた様子で溜息をつく静雄先輩。その時、私達の耳に馬の鳴き声のような音が聞こえた。



『セルティ。』


セルティは、慌てた様子でPDAを取り出して私が静雄先輩をどうしてそばにいようと思っているのかの理由を全部静雄先輩に伝えた。



「俺はお前に守られたいと思ってるのか?」


『本気で戦ってもいいですよ?私も化け物なんで。』


静雄先輩と私は一度ケンカをしたことがある。その時は私の体力切れの負け。


「お前が化け物だったら今の俺は魔王だっての。つか、その切り裂き魔を殺す殺す殺す!!」


そのあとの静雄先輩はぶち切れた様子で殺すの言葉を連呼し続けていた。



『…はぁ。何かセルティに任せても大丈夫そうなので、私はとりあえず帰りますね。』



こんな風に静雄先輩がキレてしまったらとてもじゃないけどセルティではないと相手できないだろう。



私はそのあと、何となくだがドライブを続けた。



今日の嫌な出来事を思い出しながら…。


****


「珍しいね。君が俺を訪ねるなんて、どういう風の吹き回し?」



『…臨也くんは情報屋さんなんでしょ?』


私が来たのは、新宿の情報屋の臨也くんのマンション。



「なるほど。情報を買いに来たってワケか。


もしかして、それは切り裂き魔のことだったりするの?」


『よく御存じで。切り裂き魔の知っていること全部教えて。情報料金はこれで。』



私はお金を臨也くんに手渡した。



「分かった。いいよ。」



それから臨也くんからある程度の情報を教えて貰った。まず、切り裂き魔の犯人は妖刀の罪歌の支配によって行われていること。罪歌はチャットを荒らしまわっていること。罪歌は襲った人物を媒介して子孫を残すこと。

そして、罪歌によって支配された人は目が赤くなる。



「以上が俺が知っている罪歌の全ての情報だよ。」


『わかった。ありがとう。』


私は臨也くんにお礼を言ってマンションを後にしようとしたが、臨也くんによってそれは阻まれた。



「どうして罪歌の情報なんて求めてたの?遊枝は噂なんて信じないんじゃなかった?」


確かに私は噂なんて信じる方ではない。むしろ鬱陶しいと思う方の人間だ。



『……確かにね。』


「身近な人が狙われる可能性があるとやっぱり違うのかな?


シズちゃんとか。」


ニヤッと意地悪な顔を浮かべる臨也くん。



『静雄先輩の傷つく姿を見るのは、あれが最後にしたいそれだけだよ。』




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