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□相思狂愛
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「天使ちゃん、天使ちゃん。可愛いね…」


うっとりとしたような甘い甘い声で囁かれて、私の思考はまとまることなく霧散した。


「佐助…ん、」
「髪の毛、甘い香りがする…シャンプー変えたの?」



ちゅっと唇に優しくキスされて、こつんとおでこを合わせて見詰めあう。


こくりと頷くと、この香り、前のより好きだなと言って髪を鋤いてくれる。


早起きして丹念にブローした甲斐あって、絡みやすい私の髪は佐助の細長い指を煩わせることなく滑り落ちていった。よかった。



さすけ、と名前を呼ぶと、唇を人差し指で突っついて しぃーって言われたので慌てて口を閉じて黙る。すると、
いい子だね、天使ちゃん。
そう言ってまた優しくキスしてくれた。
今度はさっきよりちょっと長く。



「今日の髪型、ふわふわしてて可愛い。巻いてるんだね。」
「今日のスカート、初めて見る。俺様好みだな。天使ちゃんによく似合ってるよ。」
「このブラウス、俺様が買ってきてあげたやつだよね。着てきてくれて嬉しいな。」


脱がせたくなっちゃう、と悪戯っぽく耳元で囁かれて、私の頭はまたぽわんとした。



腰あたりに回された腕が私を更に引き寄せて、距離がゼロに近くなる。


佐助のベッドにブランケットを一枚かけて横たわった私達は、ぴとりと密着して、ひとつのでっかい蛹みたい。



佐助の匂いが身体中を包んで、幸せな気持ち。

すぐ近くにある佐助の顔を見つめてみる。やっぱりかっこいいなぁ。
…佐助にぐずぐずに溶かされた思考では、いつも幼稚な考えしか回らない…


なんだよ、かっこいいって。知ってるよ、ばか。


佐助の顔を見てたら、なんだかどうしようもなくキスがしたくなって、ん、とちょっと唇をつきだす。


「しょうがないなぁ、…仰せのままに、お姫様。」


そんなこと言って優しく、今度は舌も絡めて、何度も何度もキスをくれた。


甘い甘い、優しくて愛のこもった、キス。


…ちょっぴり、下心入りのあまいキスが終わると、ゆっくり背景が壁から天井に移った。



甘い。
佐助は私に本当に甘い。


私をこれ以上にどうしたいの?
私、どんどん佐助に依存しちゃうよ…



佐助はふいに襲ってくる私の甘えたい気分を見抜いて、そして、どろどろに甘やかしてくれるのだ。



私は…私に何処までも甘い佐助が、無限の愛を捧げてくれる佐助が、好き。大好き。



「さす、けぇ…ぁっ」
「天使ちゃんのそのカオ、すっごい好き。もっともっと甘やかしたくなる。」
「ん、ゃあっ…溶け ちゃ う…」
「溶けちゃえばいいよ、俺様が愛してあげるから…。ね?」



それで、俺様しか見えなくなればいいよ。



もう ずぅっと前から佐助しか見えてないよって伝えたかったけど、とろとろに溶かされてしまった口からは喘ぎ声しか出なかった。


---


「…なんで佐助は、私が甘えたい時がわかるの?」


甘く甘く溶かされた後、私に腕枕をして優しく髪を鋤く佐助に聞いてみる。


「んー、目、かな。」

「目?」

「天使ちゃんて甘えたい時、すがるような目で俺様を見るから。」

「そっそうなの…!?」
「そうなの」


今もね、と言って佐助は甘く深いキスをしてくれた。


「ん、なんでべろちゅーしたいってわかったの。佐助はすごいね。」
「俺様もしたかったから。」
「佐助も?」
「うん。甘やかしたい時、天使ちゃんも甘えたい目してる。」
「そっそうなんだ…。」
「ね、俺様達息ぴったりだと思わない?」
「うん…嬉しいな…。」


「あはは、天使ちゃん、目がとろんってなってる。可愛い。」
「…佐助が甘やかすから…、」
「嫌?俺様に甘やかされるの。」
「ううん、大好き…。」



聞けば、佐助の一目惚れから始まったこの恋。

甘い蜜に誘われて周到に張り巡らされた罠に全身を絡めとられた私はさながら、この日の当たらない白い肌の上に舞った赤い蝶々。


ただ、何処までも甘い世界で佐助の愛に溺れていくだけ―――。




相思

「愛してるよ、俺様だけの天使ちゃん……。」



手首に繋がれた華奢な鎖がじゃらりと重苦しい音を立てた―――。
(わたしもだよ、さすけ…)



happy end...or?
(許さねぇ…猿飛佐助)
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