KRB夢

□9th
3ページ/3ページ

あと数分後にはゆづきの家に着く。

青峰はどう話を切り出そうかとあれこれ考えていた。

だが、ゆづきもゆづきで、別のことを考えていた。


「…ねぇ。」

青峰「!…ん?」

「家、寄っていく?」

青峰「!?…え…」


思いもよらないゆづきの一言に、動揺を隠しきれない青峰。

自分が今考えていることからかなり飛躍した内容だったから。


「マッサージの約束。口実だったかもしれないけど、腰が良くないのは事実よ?」

青峰「いや…それはありがてぇし、やってもらいたいのは山々だけどよ…ゆづ、自分で何言ってっかわかってんの?」

「ん?」

青峰「家あがって、マッサージして、それで終われると思ってんのかよ?」

「…大輝のこと、するのは嫌じゃないもん…」

青峰「!…するのはって…逆のことは考えねぇのかよ?俺だって一応健全な男なんだけど。」


青峰は必死で理性と戦っていた。

ゆづきを傷つけたくはない。

けれど、

家に上がってしまったらこれまでと同様にキスをしたくなって、胸に触りたくなって…

それ以上のことをしたくなってしまうことが予想できた。


「…大輝は…してほしかったんじゃないの?本当に、マッサージだけのつもりで私に頼んだの?」

青峰「あれは口実だって言ったじゃねぇか…」


しばらくの間沈黙が流れたが、先に口を開いたのはゆづきだった。


「…そっか。じゃあ、いいよ。もう。」

青峰「!?…ちょっ、待てよ。」

「何?マッサージしてもらいたかった訳でも、それ以上のことしたかった訳でもないんでしょ?だったらもういいじゃない。」


ゆづきはこれまでの態度とは打って変わって、青峰のことを突き放すかのごとく早足で歩き出す。

青峰は予期しないゆづきの態度に驚き、無意識のうちにゆづきを追った。

だが、ゆづきのスピードはなかなか落ちなかった。

青峰が少し走るくらいのスピードでようやく追いつく。


青峰「ゆづ、待てって。何怒ってんだよっ…!?」


ゆづきの手を引っ張り、自分の方に向かせようとする。

そこには目にうっすら涙を溜めたゆづきの姿が…


「嫌だっ…見ないでよっ…!」

青峰「!?…ゆづ…お前…なんで…」

「何でもないっ!ほっといてよ!帰りたいんでしょ?早く帰ればいいじゃない!」

青峰「…!」

「っ…大輝も結局っ…!大輝とはっ…ただ一緒に居られると思ってたのに…っ!」


ゆづきは涙が零れ落ちるのをこらえているようだった。


青峰「ゆづ…っ」


ゆづきを抱きしめる青峰。

ゆづきの泣きそうな顔を見るのは去年のあの事件以来だった。


ゆづきを悲しませない為に今まで一緒に居たにも関わらず、

関係を変えようとしたらこの有様だ。


青峰は後悔しようとしていた。


青峰「ごめんっ…」


ゆづきは青峰の腕の中で一つ咳払いをした。

もう、いつものゆづきだった。


「…大輝は悪くない。ごめん。私が弱いだけ。」

青峰「ゆづは弱くねぇよ。…俺が悪かった。お前の気持ち、ちゃんと汲み取ってやれなかったから。…しかも、俺が余計なことを口走ったせいで…気遣わせたんだよな。」

「ううん…。大輝に必要とされなくなるのが怖かった。私のわがままを、大輝に押し付けるみたいにしちゃった…本当最低だよね。ごめんなさい。」


お互いに謝り合う二人。

青峰はもう難しく考えるのはやめたかった。


青峰「ゆづ、はっきり言ってくれて構わねぇ。これから先も、俺と一緒に居てぇって思ってくれるのか?」

「…大輝が、私を必要としてくれるなら…」

青峰「俺はゆづのこと必要だ。」

「そう思ってくれるなら…一緒に居られるんじゃないのかな…?」

青峰「ゆづの気持ちが知りてぇんだ。そこに、俺のことを”好き”っていう感情はないのか?」

「!…」

青峰「俺はゆづと一緒に居てぇ。ゆづのことが…好きだから。…普通の恋人になれねぇかな?」


ついに青峰はゆづきへの気持ちを言葉にした。

ゆづきは目を見開いてかなり驚いている様子だ。


「…恋人…?」

青峰「返事はすぐにくれとは言わねぇ。ゆづなりに考えてみてほしい。ただ…」


青峰はゆづきの目をまっすぐに見て言った。


青峰「俺は、ゆづから離れねぇ。それは信じててくれ。」

「大輝…」

青峰「もし、俺とは普通に付き合えねぇって思うんなら、もう手は出さねぇ。ただのチームメイトだ。」

「!…」

青峰「でも、もし…俺のことを選んでくれるんなら、ゆづのこと全力で幸せにする。悲しませたりしねぇよ。」

「大輝…」

青峰「今まで…付き合ってもいねぇのに色々させちまって悪かったな。…じゃあ、今日のところは帰るわ。答えが決まったら聞かせてくれ。…じゃあな。」


青峰は行ってしまった。

青峰の本当の想いが、ようやくゆづきに伝わった…

















つづく
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ