KRB夢

□11th
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過去のことを思い出していたら目頭が熱くなった。

思えばあの時、私は全く否定的な姿勢を見せなかった。

むしろ大輝の全てを受け入れ、大輝の思う通りにしてあげたいと思っていた。

キスをされたのも、大輝への奉仕も、決して嫌ではなかった。

そういうことをすることで、大輝が幸せを感じてくれるのならば、

それは私にとっても本望だったから。

大輝は私の傍にずっと一緒にいてくれて守ってくれた。

申し訳ない気持ちもいっぱいだった。

その罪滅ぼしだったのかもしれない。

そんな理由でキスをしたり奉仕をしたりするなんて他の人に引かれるのかもしれない。

でも、

私にとって、大事なキスなんてあの時の一つ以外なかった。

奉仕をしたり、身体を触らせたりはしたけれど、セックスをしたい訳ではなかった。

こんな私でも、バージンは自分が心から好きになった人に捧げたいと思っていた。

もう、そんな風に思える人はいないんだけど…


それでも、

こんな奇妙な関係に陥ってしまった私相手にも、

大輝は正直な気持ちをぶつけてきてくれたんだ。

私も真剣に考えて、答えを出さなくちゃ。



次の日、日曜日。

今日は久しぶりに部活も休み。

結局いつもと同じ時間に目が覚めた。


夢を見た。

大輝が出てきた。

夢の中での大輝は、小さな子どもみたいにくしゃくしゃの笑顔で笑っていた。

大輝の笑顔は好きだ。

大好きなバスケを楽しそうにする姿は素敵だと思う。

大輝の魅力はたくさん知ってるつもり。

それが恋に繋がるものなのかは自分でもわからない。


「…朝ごはん、用意するか。」


朝の身支度を済ませ、キッチンへ向かった。

いつものように豆乳とグラノーラを皿に入れ、ついでにバナナヨーグルトも追加した。

食べている途中、リビングのテーブルに置いたスマホのバイブ音が聞こえてきた。


「!…メールかな、誰だろう。…」


表示された文字を見ると、今日会う予定をしている人の名前だった。

ドクン、と心臓が鳴ったような気がした。

******
おはよう。
今日は12時に駅前のロータリーで待ち合わせしよう。
大丈夫かい?
******

私は冷静さを取り戻しつつ、大丈夫とだけ返信メールを打った。

今日、会うんだ…

学校外で会うのは本当に久しぶりだ。

私、うまくできるかな。

変な態度とらないようにしないと。


ガチャッ、とドアが開く音がした。


母「あら、おはよう。休みの日でも早いのね。」

「おはよう。お母さんこそ珍しく早起きね。昨日遅かったんじゃないの?」

母「ふわぁ〜…ん。ちょっとね、残業長引いちゃって…ごめんね。あ、夕飯ありがとう。美味しかったわよ。」

「どういたしまして。…まだ寝るの?」

母「うーん、そうね…もう少し休ませてもらおうかしら。ゆづきも部活ないならゆっくりすればいいのに。」


お母さんはうがいをした後、水を飲みながら話す。

キャリアウーマンのお母さんは、昨日も遅くまで仕事だったよう。


母「…今日、征十郎くんとお父さんに会うのよね?」

「!…聞いてたんだ。」

母「昨日連絡もらってね。まったく、急な話よね。ゆづきも昨日言われたんでしょ?」

「うん。…」

母「よろしく言っておいてね。お母さん、14時から1件打ち合わせ入ってて行けないのよ。」

「そう…大変だね、日曜日も仕事で。…」

母「夕飯は作っておくから。一緒に食べれるかどうかはわからないんだけど…あ、明日は必ず夜いるから、一緒に食べましょ。お母さん、いいお店見つけたのよ!ゆづきにも食べさせたいのよ、美味しいイタリアン♪」

「わかった。楽しみにしてる。」


お母さんは、忙しいながらも私との時間を作ろうとしてくれている。

なんだか申し訳ないけれど、素直に嬉しいとも思う。

私を育てるために女手一つでがんばってくれているんだ。

私もできるだけ早く自立して、お母さんに恩返ししたい。


朝食を済ませた後、洗濯や食器洗いをする。

それも終わると自分の部屋で出かける身支度を始める。

着ていく服は決めていた。

白のワンピース。

シンプルだけど洗練されたデザインが印象的で、ワンポイントでそのブランドが一目でわかる柄が施されている。

着た後で鏡の前で立ってみる。


「…私みたいな庶民には似合わないな(苦笑)」


普段はなかなか着ることのない服に思わず肩に力が入る。

深呼吸をして、いつものように冷静沈着な藍川ゆづきでいよう。

そう心に決めた。

大輝のことをちゃんと考えるためにも、今日は過去の思い出に縛られないで過ごそう。



















つづく
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