KRB夢
□12th
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ゆづきは、待ち合わせ時間の15分前に駅のロータリーに着いた。
「早く来すぎたかな…」
そう小さく呟いた直後、見知った車が目に入った。
その車は私の方に近づいてきて、すぐ側に停まった。
ガチャっと後ろのドアが開くと、白いシャツにエンジ色のネクタイをして正装した彼が出てきた。
赤司「やあ、待たせたね。」
「!…今来たところ、です。」
赤司「なぜ敬語なんだい?いつも通りにしてくれよ。」
「…なんとなく、正装だったから、かな。いつもより大人っぽく見えちゃって…」
私とは違ってやはり本物のお坊っちゃまだからね。
ブランドものの服もちゃんと着こなしていて、とても似合っている。
キマってて、かっこいいな…
赤司「ゆづきも大人っぽく見えるよ。とても似合っている。」
「!…そ、そんなことないよっ…」
赤司「あるよ。…それは以前父さんがプレゼントした物かい?」
「あ…うん。こんな高価な物いただいて、着るのももったいないくらいだったけど…せっかくだからと思って。」
赤司「その気遣いに感謝するよ。父さんもきっと喜ぶだろうね。」
そう。
このワンピースは前の誕生日にお祝いのプレゼントとしていただいたのだ。
あまりに高級品だったから返そうかと思ったくらいだったけど、気迫に負けたんだっけ。
今日まで一度も着ることはなかったけれど、
今日みたいな日には合っていたのかもしれない。
赤司「立ち話ですまない。さあ、乗って。中で話そう。父さんは急用を済ませてから店に向かうそうだ。」
彼に促され、車に乗り込んだ。
専属の運転手さんに挨拶をして、彼と私は隣同士に座った。
近過ぎず遠過ぎずな距離だった。
赤司「…」
「…」
お互い、必要以上に喋らない性格なのか沈黙が数分続いた。
気まずいような、不自然なようなこの空気。
私から何か話しかけるべきか…
でも、二人きりが久しぶり過ぎてうまく言葉が出てこない…
ダメだダメだ。
普通にするって決めたじゃない。
過去の思い出に縛られないで過ごすって決めたじゃない。
さっきはいっぱい話してもらった。
次は私ががんばらなくちゃ…!
「…あのさっ…」
赤司「そういえば…」
偶然にも、言葉を発したタイミングが重なった。
思わず目を合わせる二人。
そして彼は少し笑った。
赤司「何だい?」
「!…せ、征が先に話して、いいよ?」
赤司「こういう場合はレディーファーストさ。」
そう言われたらなんだか胸がドキッとした。
深い意味はないのに。
私、いい加減ちゃんとしなきゃ…
ちゃんと、妹しなきゃ…