KRB夢

□15th
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青峰「…昨日、見た。お前と赤司が一緒にいるところ。」


ゆづきは瞬きも忘れていた。

焦点が合わず、思わず青峰から目線をそらしていた。


「…」

青峰「…なんだよ、その反応。やっぱそういうことかよ。」


青峰に何か言わなくてはと頭で思いながらも、言葉を発しようにも出てこない。

ゆづきは恐る恐る青峰の顔を見上げた。

今までに見たことのない、初めて見る表情だった。


「…っ」

青峰「ゆづ…答えろよ。赤司とそういう関係なのか?」

「!…ちが…う」

青峰「じゃあなんで抱き合ってたんだよっ!」


まさか、昨日…見られていたなんて。

ゆづきは戸惑いながら言葉を続けようとする。


「っ…違う、の…っ」

青峰「何が違ぇんだよ。お前らが抱きしめ合ってんの、この目で見たんだよっ!それでもなんでもねぇって言えんのか!?」

「…っ」

青峰「…っ、俺はゆづを責めてぇわけじゃねぇ。ただ、はっきり言ってくれ。…もう一度聞く。赤司と、付き合ってんのか?」


ゆづきは真剣な青峰にちゃんと応えようと思った。


「…付き合ってない。」

青峰「…じゃあ…俺と同じような関係なのか?」

「…違う、よ…」

青峰「…じゃあ……好きなのか?」


ゆづきはもう俯いていた。

青峰が今、どんな表情でいるかわからなかった。


「……好き、じゃない…。」

青峰「!…」

「…っ…」


そう言った瞬間、涙が頬をつたった。

青峰の手がゆづきの頭に伸びる。

だが、触れそうで触れないところでそれは止まった。


青峰「…っ、なんで泣いてんだよっ…ゆづ…」

「う…っ…」


ゆづきの涙を見るのは、今日この時が初めてだった。


青峰「…なんとか言えよ…」

「…っ…大輝…」

青峰「…ゆづの正直な気持ち聞かねぇと、俺、諦めらんねぇんだよ。」


青峰の顔を見上げると、先ほどよりももっと切ない表情をしているのが目に入った。

ゆづきは青峰に伝えるべきことを伝えることにした。


「…私…赤司くんとは本当に…そういう関係じゃない。だけど…大輝とは恋人になれない…」


しばらく沈黙が続く。

ようやく口を開いたのは青峰だった。


青峰「…好きでもねぇのに今まで色々付き合わせてたんだな。…」

「…!」

青峰「悪かったな、ゆづ。…俺は、お前のこと好きだった。だから手出しちまってたけど…順番が間違ってたのは確かだよな。わりぃ。」

「っ…大輝は、悪くない…。私が、悪いの。私が…ちゃんと、してれば…」

青峰「ゆづは何も悪くねぇよ。全部、最初から誘ったのは俺だ。…自分の気持ちはっきり伝えねぇで、ゆづが拒否しねぇことをいいことに色々してたんだからよ。…」

「っ…私が、悪いよ…中途半端にあんなこと…」

青峰「…もう、いい。ただ…ゆづは、俺のこと…」

「!…大輝のこと…好き、だよ。人として…。大輝に必要とされてること、嬉しかったのは本当。だから大輝に触れられた時、嫌じゃなかったのも本当。誰でもよかったわけじゃない。…けど…」

青峰「…」

「…恋愛としての”好き”は…感じなかった。」


正直な気持ちを言うのが100%正しいとは言えない。

心が痛む。

でも、もっと痛みを感じているのは大輝の方だ。

ゆづきはそう感じていた。


青峰「…わかったよ。はっきり言ってもらえてすっきりした。…これからはただのチームメイトに戻るしかねぇな。…そう簡単に普通にしゃべれるかわかんねぇけど…」


青峰は苦笑いを浮かべながら言った。


「…私…マネージャー辞め」

青峰「そんなこと言うんじゃねぇよ。」


ゆづきの言葉をかぶせるようにして、最後まで言わせなかった青峰。

長い付き合いだ。

ゆづきが何を言おうとしているか、この時は予想していた。


「!…大輝…」

青峰「お前はぜってぇ辞めるな。俺のせいで変な気使うのもなしだからな。…俺だって全然うまくやれる自信ねぇけど…ゆづとこのまま何でもない関係が続くのは嫌なんだよ。」

「!…っ」

青峰「俺の最後のワガママ聞いてくれっか?…ゆづと、友達でいてぇ。」

「…う、ん…っ」


ゆづきはまた、涙を流していた。

青峰はゆづきの頭に手を伸ばし、優しく撫でた。

これで最後だと自分に言い聞かせて…
























つづく
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