KRB夢

□15th
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数日後…

ゆづきはそろそろ青峰に告白の返事をしなければならないと思っていた。

だが、なかなか決断ができずにいた。

それに、母親と赤司の父親の結婚についても、賛成しながらもある不安を拭えずにいた。


そんな中、部活終わりに赤司から話しかけられた。

一緒に帰ろうとのことだった。

二人きりで帰るのは、去年のあの時以来だった。

同じ学校の生徒達があまり通らない道を選んで歩く。

話の内容は予想していたことだった。


赤司「あれから、父さん達のこと何か考えたかい?」

「…ん。結婚には賛成、だよ。…」

赤司「そうか。…」

「…征は違うの…?」

赤司「いや…俺も、賛成する。…父さんは、茗子さんのことを本当に愛しているから、結婚したいと思うのは自然なことだ。」

「…征は、私のお母さんが…自分の母親になってもいい…?」


私にとっては、二人とも血の繋がった実の母親と父親だから、

この結婚に反対する理由はないんだけど…


赤司「あぁ。茗子さんはいい人だ。優しくて、芯が強くて、品もある。父さんも言っていたが、俺達にとってはもったいない程の女性だ。そんな人が母親になってくれると言ってくれている。喜ばしいことだよ。」

「!…ありがとう。お母さんのこと、そんな風に言ってくれて。」

赤司「これからは俺のお母さんでもあるからな。自慢話は控えなくては。」


征は少し笑いながらそう話してくれた。

私も征も、この結婚には反対どころか賛成で意見が一致した。

でも…


赤司「…結婚したら、本当に兄妹になるな。」

「!…っ」


自分の心の片隅で思っていたことを征に言われ、思わずドキッとしてしまった。

そう。

結婚するということは、少なからず、征と私は一つ屋根の下で一緒に暮らすということ。

それは、兄と妹という関係のもとに成り立つこと…


赤司「…まぁ、そうでなくても、今までだって本当に兄妹なんだけどな。」

「…征…」


ゆっくりと歩いていた足を止めた征。

私も同じように止まった。


赤司「…ゆづきは、もう、俺のこと…」


心臓がはねた。

バクバクいってうるさいくらいだ。

征の視線が、痛いくらいだ。

この切ない表情は、あの時と一緒だ。


「…っ…征…私…」

赤司「すまない…っ」


後ろに振り返って、視線をそらされてしまった。

多分、きっと、征は無理してる…


赤司「…兄として、何かできたらいいのかもしれないな。何かあるかな。…」


もう、いつもの征のトーンだ。

表情は見えないけれど、きっと少し口角を上げてる。

私、征にとっては無理をさせる存在なのかも…


「…っ」


泣くな。

泣いちゃダメだよ、私。

征はがんばってくれている。

私だってしっかりやるって決めたんだから…っ


ぎゅっ

と抱きしめられ、視界が狭くなった。

あぁ…あの時と同じだ。

あの時と同じ匂い、同じあたたかさだ。


赤司「…世の中の兄は、妹をこんな風に抱きしめることあるのかな。」

「っ…ごめ、ん…なさい…」

赤司「ゆづきが謝る必要はないよ。…俺の方が悪かった。先に種を蒔いたのは俺だ。…すまない。」


征の腕の中で思いきり首を横に振った。


赤司「…完璧主義の俺が、こんなに乱されるなんてな。それだけゆづきは俺にとって…かけがえのない存在なんだ。」

「…っ、私…征に、たくさん無理させたり…迷惑になってるよね…っ」

赤司「なってないよ。」

「でも…っ」

赤司「なってないって。…」


抱きしめられた腕の力がさらに強くなった。


「…征。私といるの、辛くない…?」

赤司「!…ゆづきは、辛いのかい?」

「…辛くない。…でも…お兄さんとして見ようとしても、見れなくなる時が…今でもある…。」

赤司「!…」

「本当は、ちゃんと妹でいたいの。お母さん達も結婚することだし…ちゃんとしたい気持ちはあるの。」

赤司「…うん。…それをいつも妨げている原因は俺の言動かな…」

「!…でも征が普通にしようとしてくれてるのも、わかるから。」

赤司「…」

「征と一緒に暮らすことになったら、前みたいな感情が生まれるんじゃないかって…正直心配しちゃってる自分がいる。」

赤司「!…それは…」

「だけどねっ…!あの時誓ったように、家族愛に変えるようにするよ…!?征に迷惑かけないようにするからっ…だからっ…」


腕の力が弱まった。

目を合わせると、征はもう切ない表情ではなかった。

そのままぽんっと私の頭に優しく手を置いて撫でてくれた。


赤司「…運命を受け入れようとあの時俺が言ったのに、蒸し返してしまったのは俺のせいだ。本当にすまない。…ゆづきの方が大人みたいだな。」

「えっ…」


すると、再び征の腕の中に収められた。


赤司「俺だって…妹として見れない時あるよ…」

「!?…え…」


そのまましばらくぎゅっと抱きしめられた。

私はその腕を振り払うことはせず、この後の征の反応をうかがった。

あの時以来の、征の腕の中。

まさか再びこんなことしてもらえるだなんて…


赤司「…時の流れに身を任せればいいよ。」

「!…でも…私達は絶対に…」

赤司「結ばれはしなくても、共に過ごすことはできる。それが二人にとって幸せなことならば、一緒にいられればそれだけでいい。」


胸がドキドキする。

征に、こんな風に言ってもらえるだなんて。

夢を見てるみたいだ。


赤司「…いつか、他に好きな人が現れた時には、兄として、妹として、応援しあえばいい。それまで一緒にいればいい。」

「…一緒に、いる。」

赤司「!…うん。そうしよう。」

「…一緒に、住むんだしね。これから。」

赤司「そうだな。」

「…妹で、いるね。なるべく。」

赤司「!…あぁ。俺も兄でいるよ。なるべく。」

「!…征が真似するなんて珍しい。あはは。」


何かが解決したかはわからない。

けど、

征があんな風に言ってくれたことは、素直に嬉しいと思った。


”一緒にいられればそれだけでいい。”


これからは一つ屋根の下で暮らすことになる。

征と一緒にいてもいいのなら、兄妹とか関係なしに、一緒にいよう。
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