KRB夢

□16th
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あれから数ヶ月が経ち、季節は冬。

あっという間に冬休みも過ぎて、新学期に入ってすぐの頃。

相変わらず、バスケ部は練習練習の毎日だった。


ある日の放課後のこと。

今日もいざ練習だ、と意気込みながら部室に入ろうとした時、俺は誰かに名前を呼ばれた。


「黄瀬くん!」


振り向かなくても、その声の主はわかっていたんだ。

俺の鼓動がドキッと高鳴るから。

ゆっくりと振り返ると、思っていた人が笑顔で立っていた。


「部室前でごめんね。前に言ってたCD渡したくて…」

黄瀬「わー!ありがとう!帰ったらソッコーで聴くっス!」




どちらかというと大変な一日になることに身構えてることが多いんだけど。

今年は違う意味で複雑っス…


黄瀬「はぁ〜…」


俺は思わずため息をついた。

でも、今が授業の合間の休み時間だってこと一瞬忘れてたや。


紫原「何ため息なんかついてんの〜?」

黄瀬「!…あ…あぁ、そっか。まだ学校だったっスね…」

紫原「ボケてんの〜?黄瀬ちん。」


まさか紫原っちにツッこまれる日がくるなんて。

なんだかいつもと立場が逆な気がするっス…

それはそうと、紫原っちはこんな時にでもお菓子をむしゃむしゃ食べてるし…

さっきお昼ご飯食べたばかりなのによく食べるなぁ、本当。


黄瀬「…何食べてるんスかー?」

紫原「んー?チョコだよー。今朝コンビニ寄ったら新商品出てたらしくてさ〜。もらったの。」

黄瀬「!…誰にもらったんスか!?」


思わず大きい声で言っちゃったもんだから、さすがの紫原っちもびっくりしたみたいで。

持っていた食べかけのチョコを少し落としてしまっていた。


紫原「あーーー!!!もー!黄瀬ちんが急に大声出すからー!!」

黄瀬「あー…ごめんっス。。」

紫原「一口分どうしてくれんのー。弁償してよー。」

黄瀬「えー!?…今度モデルのギャラ入ったら何か奢るっスよ〜…」


まったく、本当にお菓子には目がないんだなぁ。


紫原「で!?何なの、さっきの過剰反応は。誰にもらったとかそんなに重要?」

黄瀬「!…いやぁ…特に、意味は、ないっス…ごめんなさい。」

紫原「…はぁ。…聞かれたから一応答えるけど、チョコはさっちんからもらったよ。たまたま見つけたからだって言ってたよ。」

黄瀬「!…そうっスか。桃っちが…。桃っち、優しいっスね。見つけたからってわざわざくれるとか…」

紫原「んー?ていうか自分用に買ったのを1個くれただけだよ?まぁさっちんは確かに優しいけどさぁ。」


そういうことか。

相手が桃っちだし深い意味ないことはわかったけど、

なんかこの時期にチョコって聞くと…ね?


紫原「ていうか何?チョコ食べたかったの?」

黄瀬「いや、決してそういうわけじゃないっス。…」

紫原「…藍ちんからもらったー、って言ったらどんな反応してたの?」

黄瀬「なっ!?…なんでそんなこと言うんスかー!?」


また大きい声を出してしまった。

今度はクラスにいた人達に見られてしまったくらいだ。

紫原っちにはまた睨まれてしまい…


紫原「俺まで恥かいた気分になるから本当やめてよね、そういうの。」

黄瀬「すいません…」

紫原「…ていうか、まだ藍ちんのこと好きなんだねぇ。」

黄瀬「!?…別に、俺は…」

紫原「いやいや、そんなわかりやすい反応しといて否定するとかないっしょ。」


それもそうか。

今さっきの俺の反応からすると全く説得力ないっスね。


紫原「藍ちんに言ってみれば〜?チョコちょーだいって。」

黄瀬「はっ!?」

紫原「え、そういう話じゃないの?今までの黄瀬ちんの感じから察するに。」


紫原っちっていつもぼや〜っとしてること多いけど、

意外と人のこと見てるっていうか、鋭いところあるんスよね。

まぁ基本人に興味はなさそうだけど…(苦笑)


黄瀬「…チョコちょーだい、なんて…言えるわけないっス。っていうか!俺はチョコが欲しいわけじゃなくて…」

紫原「藍ちんが欲しい?」

黄瀬「っ!!?」

紫原「…いやいや、冗談で言ったんだからそんなマジに照れないでよ。」


しまった、俺としたことが…

マジ情けないっス。

普通にドキッとしちゃったじゃないっスか。


黄瀬「…藍っち、誰かにチョコあげるんスかね…」

紫原「さぁね〜」

黄瀬「あっさり!」

紫原「だってそんなのわかんないし〜。大体から藍ちんは前から好きな人いるとかそういう話しないじゃん。逆にさぁ、黄瀬ちんは今まで普通に接してて聞いたことなかったの?」

黄瀬「…好きな人いるかどうかは、聞いたことないっス。ただ…俺のことは…友達としてしか見てないっス。」

紫原「え、黄瀬ちん、告白したの?」

黄瀬「…まぁ半年くらい前っスけどね。告白って言えないかもしれないっスけど…」

紫原「何それ、中途半端な感じなの〜?ダメじゃん。はっきり言わなきゃ。」

黄瀬「だっ…て!…あの時は…」

青峰っちとのこともあったし…

確かに俺はずるかったんだ。

今は言わないとか言っておいて、好意があることは伝わったんだろうし…

勝手に抱きしめちゃったりさ。

本当、今更だけど反省だ。


紫原「あの峰ちんだってちゃんとはっきり言ったみたいだしさ〜」

黄瀬「えっ…!?」

紫原「あれ?知らなかった〜?峰ちん、藍ちんに告白したって。」


マジか…

青峰っち、あれからちゃんと気持ち伝えてたんだ…!


黄瀬「いつの話!?結果は!?」

紫原「えー?いつだったかなぁ?多分黄瀬ちんが言った頃とあんまり変わらないんじゃない?結果は〜…」


初めて聞く話だった。

俺の知らないところで、彼女は色々あったんスね…
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