KRB夢
□18th
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自主練のノルマも終え、彼女にメールをした。
彼女からもすぐに返信がきたから、
昨日のような嫌なことが起こっていないんだと安心した。
まあ、あいつらはもう学校にいないんだけどさ。
待ち合わせ場所である校門に向かうと、
すでに彼女はそこに立っていた。
黄瀬「ごめんっ、お待たせっ…!」
「!…ふふ。ううん、私もさっき来たばかりだから大丈夫よ。」
黄瀬「!?…何で笑ってんスか。」
「んー?黄瀬くんが一生懸命走ってここに来てくれたのが…なんだか嬉しかったの。」
黄瀬「!…っ、そういうの、マジずるいっスよ。…」
「え?何か言った?」
黄瀬「っ…何でもないっス!あっ…」
俺はキョロキョロと周りを見渡した。
彼女と二人でいるところ、
誰かに…青峰っちにでも見られたりしたら、
さらに二人の関係はこじれてしまうかもしれないから。
「…どうかした?」
黄瀬「いや…パパラッチがいないかと思って、ね。…」
「パパラッチ?あはは、さすが人気者の黄瀬くんは違うね。そっか、私、そういうの気にしないで一緒に帰ろうとか言っちゃったね…ごめんね。」
黄瀬「何謝ってんスか!?そうじゃないっスよ!俺のこと、じゃなくてっ…」
「…え?」
黄瀬「っ…と、とりあえず、帰ろう!藍っちのことはちゃんと守るからっ!…」
「!…ん。ありがとう。…」
こうして二人で肩を並べて歩くことにもだいぶ慣れてきた…気がする。
彼女と一緒に過ごす時間が徐々に徐々に増えてきて、
俺が最初の頃に思っていた「仲良くなりたい」っていう希望が、
少しずつ叶えられているような気がしていた。
…そう思ってるのは、俺だけかもしれないけど(苦笑)
「…よかった。」
黄瀬「ん?何がっスか?」
「黄瀬くんにいてもらえて。」
彼女が口を開いたと思ったら、
急にドキドキさせられるようなことを言われた。
「私ね、前まではこんなに黄瀬くんと話できると思ってなかったの。なんていうか、最初のうちはちょっと近寄り難かったし。」
黄瀬「チャラかったし?(笑)」
「ふふ。うん、ちょっとね(笑)でも、気付けばいつの間にか、こんな風に頼ってしまったり、弱いところ見せちゃったり。私にとっては、自分が素直でいられる、貴重で大切な存在になってた。」
黄瀬「!…」
「…黄瀬くんに、甘えちゃったんだよね。私。」
俺達の足はすでに止まっていた。
どちらからともなく、歩くことをやめていた。
彼女があまりにも真剣な表情で話をするから、
俺もついじっと彼女を見つめていた。
彼女は、何を言おうとしているんだろう…
黄瀬「…藍っち…」
「前に、私に、”俺のこと、男として見れない?”って言ったの、覚えてる?」
黄瀬「もちろん、覚えてるっス。自分が言ったことだし…」
「ん。あの時、すごくびっくりしちゃって、正直、どう反応したらいいのか迷っちゃったの。だから、何も言えなかった。…ごめんね。」
黄瀬「あれはっ…俺が、いきなりあんなこと言ったのが悪かったんスよ!藍っちのこと困らせるって、頭ではわかっていたんスけど…っ、なんか、悔しくて…」
「…悔しい?」
黄瀬「…藍っちには青峰っちがいるってわかってたけど、あの時はまだ…恋人同士じゃなかったでしょ…?」
「!?」
黄瀬「だから、納得いかなくて…悔しかったんス。俺も、藍っちのこと、好きになりかけてたから…」
あの時、青峰っちに負けることは想定していた。
でも、彼女を幸せにしたいっていう気持ちはあれから日に日に増す一方で、
負けを認めた訳ではなかったのかもしれない。
「黄瀬くん…全部、知ってたの…?」
黄瀬「全部、ではないと思うけど…青峰っちと付き合う前に二人がどんな関係だったかは知ってたっス。」
「…そう、なの…。知ってたの…」
黄瀬「あの時、青峰っちとライバル宣言までしたんスよ?でも、結局俺が出る幕なんてなくて、二人が正式に恋人同士になって、藍っちが笑って幸せであればいいって…そう思ってたんス。…けどっ…」
青峰っちに責められて、
傷付いたよね…?
辛い思い、したよね…?
黄瀬「っ…俺じゃ、ダメっスか…?」
「!…」
黄瀬「今まで、中途半端なこと言ったり、中途半端なことしてきたけど…っ、やっぱりちゃんと言いたいっス。」
けじめをつけよう。
もう何も、怖くない。
きっと後悔しない。
黄瀬「俺は、藍っちのことが、大好きっス。」
「!」
黄瀬「本当に、好き。ずっと、諦められなかったんス。今も、諦められないんス。…俺が、藍っちのこと、幸せにしたいんスよ…!」
「…っ、黄瀬、くん…」
彼女は静かに、一粒の涙を流していた。
その涙の訳は、何…?
俺は、彼女のことを抱きしめたいと叫んでいる腕を、
堪えさせるのに必死だった。
今すぐにでも、
抱きしめたいよ…
つづく