KRB夢

□18th
1ページ/4ページ

午後の授業は始まっていたが、

俺は上の空で、授業の内容なんて耳に入ってなかった。

午前とは違う、上の空。

頭の中ではさっきの屋上でのシーンがリピートしていた。


青峰っちは、俺と彼女のことを疑っているみたいだった。

朝、俺が彼女と体育館で話してたところを見たんだろうな…

それにしても、話してただけであんな風に疑うものか?

彼女と付き合っているのは自分だよ?

不安になるのはわかるけど、

あれじゃあまるで束縛じゃないか。

青峰っちってそういうのしないタイプだと思ってたけど…

でも、本人も言ってたな。

理性が追いつかないんだ。

頭ではわかっていても、

彼女への独占欲が抑えられないんだろう。

その気持ちは束縛嫌いの俺でも、

今ならなんとなく理解できてしまいそうになる…

彼女を好きになってしまった今なら。


そうは言っても、あれはさすがにないよな…

ああやって彼女を追い詰めたって、

嫌な思いさせるだけなのに。

現にさっきの様子だとかなり応えていたと思う。

彼女は苦しそうに訴えていた。


青峰っちは去年のあの事件で、

彼女が一種の男性恐怖症に陥ってるの、

わかってるはずなのに…


彼女も青峰っちのことを好きなら、

青峰っちには彼女をとられても仕方ないって、

心のどこかで思っていたけれど、

今は正直、任せてられない。

彼女を悲しませるんだったら、俺が許さない。


パシッ


黄瀬「いてっ」


頭に何か当たった。

気付けば先生が目の前に来ていて、怒った顔をして俺を見ていた。

どうやらずっと指されていたらしい…


授業くらい真面目にやらなきゃ。

勉強はそんなに好きじゃないけど、

成績悪いとバスケもできなくなっちゃうしな。


俺はそれから授業に集中した。

頭の片隅で彼女のことを思いながら…



その時限の授業も終わり、休み時間になると、

紫原っちが話しかけてきた。


紫原「黄瀬ちーん、ちょっとこっち。」


何かと思えばベランダに呼び出された。

でも、なんとなくわかった。

多分、さっきの話だろうな。


黄瀬「何スか?こんなところに呼び出して。」

紫原「黄瀬ちんはさぁ、藍ちんに告白してなかったのー?」

黄瀬「!」


いきなりぶっこんできたな。

予想はしていたものの、俺の話かよ。


黄瀬「…してないっスよ、ちゃんとした告白は。」

紫原「ちゃんとした告白はってことは、ビミョーな告白はしたんだ?」

黄瀬「…意外とするどいっスねぇ、紫原っちは。っていうか!俺が藍っちのこと好きって知ってたんスか!?」

紫原「え?あー、そんなの見てればわかるしぃ。結構前からでしょー?」


紫原っちにもバレていたとは…

本当、案外そっち系するどいんだな。


紫原「ミドチンは気付いてないと思うけどねー。」

黄瀬「あー、そうっスか…あ、赤司っちはどうっスかねー…」

紫原「赤ちんもわかってると思うよー。一番そういうのするどそうじゃん。」


確かに…

赤司っちには何もかも見透かされてそうだ…

怖っ!

仮にもあの二人は兄妹なんだし…


紫原「で?そのビミョーな告白をしたのはだいぶ前のこと?返事とかされたの?」

黄瀬「まぁ…半年くらい前っスかね。ちゃんとじゃないから、返事も何もないっスよ。俺も何も聞かなかったし。」

紫原「ふーん…半年前ならあれか、もう峰ちんと付き合ってる時だったかもね。」


二人がいつから付き合うことになったのかは、

正確には知らない。

でも、俺が初めて半告白をした時はすでに、

青峰っちと恋人同士だったかもね。


紫原「さっきの感じだと、あの二人、上手くいってないみたいだったけど?どーすんの?黄瀬ちんは。」

黄瀬「!?…どうするって…?」

紫原「ある意味チャンスじゃん、今って。」


いやいやいや、

チャンスって言っちゃダメじゃないか?

二人のピンチっスよ?


黄瀬「俺は…彼女が幸せなら、それでよかったんス。けど…」

紫原「あの様子だとそんな感じしなかったよねー。」

黄瀬「…ん。けど、青峰っちも、冷静になって考え直せば、きっとまた彼女のこと大切に…」

紫原「んー?黄瀬ちんはさー、 藍ちんのことが好きなんだよねー?どっちの立場になってんの?」

黄瀬「!…俺は…」


紫原っちの言う通りだ。

俺はまだ優柔不断というか…

色んな意味で怖いんだ。

どっちかを失いそうで、

怖いんだと思う。


紫原「いーの?今のまま、峰ちんにとられたままで。」

黄瀬「!…」

紫原「藍ちんのこと救えるの、黄瀬ちんかもよ?」


俺が、彼女を救える…?

本当にそんなことができるのか…?


紫原「じゃないと俺が救っちゃおうかなー。」

黄瀬「えっ!?」

紫原「嘘だよ、冗談。びっくりし過ぎだしー。」


いや、普通にびっくりしたよ!

まさか紫原っちまでライバルになったら、

なんつーややこしいことになるんだか。


紫原「けど、俺も藍ちんが幸せな方がいいからさー。」

黄瀬「!」

紫原「何とかできそうなのって、峰ちんか黄瀬ちんじゃないかな?」

黄瀬「紫原っち…」

紫原「ま、俺の勘だけどねー。」


そう言って、紫原っちは教室に戻ろうとした。

ちょうどそのタイミングで予鈴が鳴った。

俺は、思わぬところで思わぬ人に背中を押してもらった。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ