KRB夢

□19th
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人通りのないところと言えど、仮にも外だ…

そろそろやめないとな…


彼女も同じように感じていたのか、

唇を離したタイミングが一緒だった。

お互いに荒い息をととのえる。


黄瀬「はぁ…っ、大丈夫、っスか?」

「うん…はぁっ…」


もう何分そうしていたんだろう。

ってくらい、ずっとキスしてた気がする。

さっき彼女が言ったことに、俺も同意できることがある。

それは、俺も彼女と触れ合うことが心地いいってこと。

俺の場合、それは彼女を好きだからって思うんだけど、

なんかこれまで味わったことのない気持ちよさっていうか。

キスしてても波長が合うというか…

ずっとそうしてたいって思っちゃうんだよね。

本当、変態かもね。

俺…ら?


黄瀬「…ごめん、遅くなっちゃったよね。送らなきゃだ。」

「…ん。謝らないで?…黄瀬くんが帰るの遅くなっちゃうから、私が謝らなきゃだ。」

黄瀬「俺の心配はいいっスよ。…じゃあ、行こう、か?」

「うん。…」


ようやく歩き出した俺達。

本来の目的を見失うところだった。

俺は今日、彼女を家まで無事に送り届けるっていう使命のもと、

こうして彼女といるんだから。


でも、彼女に思いを伝えられてよかったと思う。

それだけでも少なからず前に進めた気がするし。

彼女の状況はどうがんばったって今すぐには変わらないんだから。

俺は高望みしちゃいけない。

最初からそういう縛りで好きになったんだから…


でも、さっき…


「…黄瀬くん。」

黄瀬「んっ!?な、何…?」

「…もう一度改めて言うけど…」


な、何スか…?

正直、もうトドメは刺さなくていいっス…!


「私、こんなだよ?」

黄瀬「へ…?」

「不思議でしょうがないの。女の子にモテモテで、選び放題なはずの黄瀬くんが、私を…なんて。」


"選び放題"って何だ…(苦笑)

やっぱり俺、未だにチャラいと思われてた?


「可愛くて、性格が良くて、ちゃんと恋愛をわかってる子…黄瀬くんの周りにたくさんいると思うけど?」


確かに、可愛い子はいる。

性格も明るくて優しい子もいる。

良い意味でも悪い意味でも、恋愛に慣れてる子もいる…

でも…


黄瀬「…俺は藍っちがいいんス。」

「!…」

黄瀬「誰が何と言おうと…藍っちが何と言おうと、俺が好きなのは藍っちなの。理屈じゃないんス。ただ、俺は藍っちといるのが楽しいし、ドキドキもするし、一緒にいたいなぁって思うんスよ。」


それが理由。

単純だけど、だからこそ理屈じゃない。

一緒にいたい、って思える人。

それが"好き"ってこと。


「…ありがとう。嬉しいよ。」

黄瀬「!…嬉しいって思ってくれるんスか?」

「うん。…それも、どうかと思うけどね。でも、正直なところ、初めて黄瀬くんの気持ちを知った時からずっと、嬉しいって気持ちは変わらないの。さっきもね、言いそうになっちゃったんだ。でも結局言っちゃった。…不謹慎ね。」


あの時言いかけてたのはこのことかな…?

俺にとっては喜ばしいことだったけど、

やっぱり複雑にはなるよね。

それもわかるよ、気持ちはわかる。


黄瀬「…俺、諦めなくていいっスかね?」

「!」

黄瀬「さっき…キスしてた時、藍っち、俺に言ったこと覚えてるっスか?」

「!…ん。…」


彼女はコクンと小さく頷いた。


俺は聞き逃してはいなかった。

あの時、

俺が彼女に"好きだよ"って言った後の言葉…


黄瀬「あれは藍っちの本心って、思っててもいいんスか?」


信じたかった。

彼女は計算なのか天然なのかわからないけど、

どうしようもないくらい男を翻弄する力を持ってる子だから。

それでも、その影には愛されることへの不信感だったり、

絶対的な愛や繋がりを求めているところだったり、

不安定な要素が多いのも確かだ。

彼女は恋を上手く認識できないらしい。

けれど、自分が心を許した相手は限られていて、

その相手と触れ合うことに恐怖感や拒絶反応は示さない。

その対象が以前までは青峰っちだった。

恋人という枠にとらわれることをあえてしないで、

身体の関係をもった。

そして後に、正式な恋人になった。

それからのことは詳しくは知らないが、

月日を経て、今は彼に対して恐怖感や拒絶反応を示すようになってしまった。

そういう状況の下、俺は彼女に好きだと告げた。

タイミングとしては少しずるかったのかもしれない。

けれど、彼女を傷つけるような彼氏を黙って許すわけにはいかなかった。

俺が守りたい。

俺が彼女を支えていきたい。

そう思ってしまったが故に、告白するに至った。

彼女は俺を拒まなかった。

そして、決定的になるであろう一言を放ってくれた。


黄瀬「もう一度、聞かせてもらえないっスか…?」


今だけは、後ろめたさを感じることなく…

素直な気持ちを教えてほしい。

そう伝えた。


「…好き、です。」


聞きたかった言葉が、聞けた。


「私、黄瀬くんに、惹かれてる。…好き、だよ。」


俺は今までで一番優しく、彼女を抱きしめた。




























つづく
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