KRB夢
□20th
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部活も終わり、自主練習の時間に切り替わった。
とうとう青峰っちは来なかった。
連絡もとれなかったみたい。
赤司っちと先輩は表情には出していなかったが、
決して胸中穏やかではない雰囲気でコーチのところへ行った。
数分後、また彼女がいないことに気付いた。
でも、理由はおそらくさっきと同じだろう。
青峰っちを探しまわってるんでしょ?
もし見つけたら何を話すつもりなんだろう…
昨日言ってたように、ケリをつけるつもり…?
正直、青峰っちの立場だったら、
振られるってわかってて彼女と会うのは厳しい…
っていうのはあくまで俺の予想だけどね。
青峰っちは薄々気付いているんじゃないかなって。
彼女と会うのが怖くて、
部活も来れなかったのかなって…
そんな気がするんだ。
…俺があれこれ言うのはおかしいかもしれないけどさ…。
*
黄瀬の予想通り、ゆづきは青峰を探すべく走り回っていた。
でも、一箇所に狙いを定めることに成功した。
きっと彼はそこにいる…
そう強く思っていた。
辿り着いたのは屋上の、そのまた高い場所。
ゆづきは懸命にハシゴを上った。
すると…
「…いた。…はぁっ…はぁ…」
青峰「!?…ゆづ…」
空を仰ぐようにして寝そべっていた青峰がいた。
手にはバスケのボールを持っていた。
青峰「…なんで、ここ…」
「…大輝の好きな場所、思い出したの。…っ」
一度だけ、ゆづきも一緒にここに来たことがあった。
付き合う前のことだが、
ゆづきにとっても印象が残っていた。
青峰「…部活は…あ、もうこんな時間か。…」
「!?…いつからそうしてたの?」
青峰「HR終わってからずっと。…」
「…何度もさっちゃんが電話したんだよ?大輝が部活来ないなんて、皆もびっくりしてたよ。」
青峰「…ペナルティ、ヤベェかもな。…」
「…明日は、行くよね…?」
青峰「…まあさすがに2日連チャンはヤベェよな。」
青峰はゆづきに気づかないように小さくため息をつき、
持っていたボールを見つめ、俯いた。
「…どうして、休んだの?」
青峰「…なんとなくだ。部活行く気分じゃなかった。」
「私のせい?」
青峰「!」
間髪入れずにゆづきは言った。
青峰が本当のことを言っていないと、
ゆづきにはすぐわかっていた。
「正直に、言って…?」
青峰「…ゆづのせい、じゃねぇよ。マジで。」
「…」
その言葉を聞いた後、沈黙が流れた。
ゆづきも何を言ったらいいのか、
わからなくなっていた。
青峰「…ゆづ。」
沈黙を破ったのは青峰だった。
いつもみたいな男らしい力強い声ではない。
青峰「お前、俺に何か話あるんだろ?」
「!…」
青峰「だから、ここに来たんだろ?…」
青峰は、これまでに見たことがないような寂しい表情だった。
ゆづきにもそれが痛いくらいわかった。
まるで、自分が別れを切り出すことを
わかっているような態度だったから。
青峰「…はっきり言ってくれ。俺は、もう、覚悟できてるからよ。…」
別れようとすることは、
こんなにも辛いことなのかと、
ゆづきは痛感していた。
青峰もまた、言葉とは裏腹に、
鼓動が速くなるのを抑えきれずにいた。
私は最低だ…
最低だからこそ、
今のままではいられない。
決めたことだ。
そうするしかない…
「…大輝。…私、大輝と付き合う資格ないの。…恋人として付き合うの、もう終わりにしよう…?」
青峰「!」
頬に涙がつたった。
同じタイミングだった。
つづく