KRB夢

□21st
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ゆづきは身体を起こし、目を見開いた。

辺りをキョロキョロと見渡し、

知らない空間に驚きを隠せないでいた。


黄瀬「あっ、ちょっ…まだ無理に起きちゃダメっスよ!」

「っ!…ん…頭ズキズキする…」

黄瀬「ほらー。まだ横になってていいっスから…」


彼女は素直に従って、再び枕に頭を預ける…

かと思いきや、


「いやいや、そういう訳にもいかないっ!」


と言いながらガバッと起き上がった。

俺はその勢いにびっくりした。


黄瀬「無理しないでよ、遠慮もいらないっスよ?」

「だ、だって…っ!ここ、黄瀬くんのお家なんでしょ…?初めて来たのにこんなっ…申し訳なさすぎるよ…」


彼女は萎縮したあまり、本当にその身体が小さく思えた。

それすらかわいいと思ってしまう俺は、

もはや彼女に溺れている…


黄瀬「本当に気にしなくていいっスよ。…いや、気になるのはわかるけど…藍っちの身体が一番心配っス。だから無理はしないで?あ、熱測ってみようよ!体温計〜…」

「…」


机の上に置いていた体温計を取りに行き、

ベッドへ戻ってきた時のことだった。

突然、手に人の温度を感じた。

彼女の手が、俺の手に重なっている。


黄瀬「!…藍っち…?」

「…迷惑かけて、心配かけて、ごめんね。それと…ありがとう。」

黄瀬「なーに言ってんスか、迷惑なんて思ってないし、心配はしたけど…少しでも藍っちの力になれたんなら、俺も嬉しいっス。」

「いつも黄瀬くんには助けてもらってばかりだね。本当に感謝してる。」

黄瀬「!…急にそんな…改まって言われると照れるっス。…」

「本当の気持ちだよ?…」


あー…ヤバいヤバいヤバーい!

そんなほっぺ赤くさせて(熱のせいだけど)、

うるうるした上目遣いで(身長差のせいだけど)、

手握られながらそんなこと言われたら…


彼女の顔に近付いて、

唇がまさに触れようとしていたその時だった。


コンコンッ

というノック音と共に、

俺達の距離は一気に離された。


黄瀬「!…はい、どーぞ…」


ガチャッ

とドアが開くと、

そこには1番上の姉ちゃんと、

その後ろには2番目の姉ちゃんもいた。


「!?」

黄瀬姉@「あ、目覚めたみたいだね。これ、お母さんから。食べれるだけ食べて、薬飲んでねって。」

黄瀬「あ…ありがとう。…悪いね。…」


正直まださっきのドキドキが残ったままなんスけど…!

姉ちゃんからトレーを受け取る時も手が震えそうになった。


黄瀬姉A「熱は大丈夫〜?あっ、どうもはじめまして〜!私、涼太の2番目の姉の〜」

黄瀬「ちょっ、そういうのいいから!騒ぎに来たんなら部屋戻ってよっ!(恥)」

「は、はじめまして…!藍川、ゆづきと申します。この度は突然お邪魔して、ご迷惑をおかけして申し訳ありません…!」


彼女は背筋をピンと伸ばし、

姉ちゃん達に向かって深々と頭を下げていた。


黄瀬「!?…ちょっと!藍っちもそんなにかしこまらなくていいっスから…」

黄瀬姉@「…とっても礼儀正しい子ね。」

黄瀬姉A「本当っ!涼太にはもったいないくらい〜。ゆづきちゃん、涼太のどこが良くて付き合ってるの〜?」

「えっ…!?あ…その…」

黄瀬「もー!そういうの本当いいってば!用が済んだら出ていけー!」


まったく。

弟をからかいやがって!

初対面なのにこんな恥ずかしいところ見せちゃったし…

ああ、騒がしくてバカな姉弟だと思われたかな…


黄瀬母「あらあら、何か騒がしいと思ったら…」

黄瀬「母ちゃん…!」

「!?…は、はじめまして!ご迷惑をおかけして申し訳ありません!私っ…」

黄瀬母「藍川ゆづきちゃんね。ご丁寧にどうもありがとう。さっき、聞こえてたのよ。身体はどう?」

「あ…だいぶ、よくなりました。…ご心配おかけして、すみません。それに…突然お邪魔して…」

黄瀬母「いいのよ、家ならいつでも大歓迎だから。こんなこと言うのもなんだけど、涼太が彼女連れてきたの初めてだったから、ゆづきちゃんに会えて嬉しかったわ。」

黄瀬姉A「本当だよね〜しかもこんな可愛い子!」

黄瀬姉@「しっかりしてるしね。涼太と違って。」

黄瀬「なっ!?」


この家での俺の扱いって…

ひどくない!?(泣)


黄瀬母「まあとにかく、ゆっくりしていって構わないからね、ゆづきちゃん。なんなら、泊まっていきなさい?」

黄瀬「ぅえっ!?」

黄瀬姉@「涼太が興奮するんじゃないの。まったく。」

黄瀬「こ、興奮なんてっ…!」

黄瀬姉A「まあバリバリの思春期だし?(笑)でも本当、ゆづきちゃん泊まっていきなよ〜。明日休みでしょ?ゆっくりしてって〜。服とか私の貸すし!」

黄瀬「おい、姉ちゃ…」

黄瀬母「とりあえず、私達は退散しましょ。おかゆ、よかったら食べてね?」

「あ…いただき、ます…!ありがとうございます!」

黄瀬姉A「じゃあね〜ん♪」


バタン

嵐が去った後みたいな感覚に陥った。

一気に静まり返った俺の部屋。


黄瀬「…本当、ごめんね…騒がしい家で…姉ちゃんとかバカなことばっか言うし…」

「ううん!とっても仲の良い、素敵な家族なんだなって思ったよ。」

黄瀬「えー?そんなお世辞言わなくていいっスよー…」

「ううん、本当に。私さ、生まれた時からずっと、お母さんと二人だけだったから…すごく憧れる。お姉さんとかもうらやましい。」


そうか。

彼女はお父さんも家にいなかったし、兄弟だって…


「まあ、私も、戸籍上お兄ちゃんはいるんだけどさ(苦笑)」

黄瀬「赤司っちがね(笑)…あ、そういえばさっきね!…」


俺は、彼女の家に電話をしたこと、

その時に赤司っちが出たことなどを話した。

これまでのことを話しながら、彼女には熱を測らせた。

幸い、微熱程度まで下がっていた。

それから、

母ちゃんの作ったおかゆを美味しい美味しいと言いながら食べ、

食欲はあったのか、全部平らげてくれていた。


その後、彼女は家に連絡をしなくてはと言って、

自分の携帯を取り出した。

さっき、母ちゃんが言ってた話…

どうなんだろか?

と、泊まっていくとかなんとか…


黄瀬「あ、あのさ…さっき言ってた話…」

「ん?何の話?」

黄瀬「とま…と、泊まっていくとかって話…!」

「!…ああ、それね。気持ちは嬉しいしありがたいけど、これ以上迷惑かけられないよ。今日はちゃんと家に帰るよ。」


あ…そ、そうだよね。

そういうもんだよね。

いくらなんでも、ねぇ?

年頃の女の子が彼氏(的存在)の家に泊まるなんて、ねぇ…

…ちょっと、期待しちゃってた俺はバカちんっス。


黄瀬「…」

「…黄瀬くーん、聞いてる?」

黄瀬「!…あ…ごめ…」

「よくあるよね(笑)ボーッとしてた?」


俺としたことがっ…

バカな妄想はやめて、現実を見よう!

仮にも彼女は病人なんだからっ…


「…泊まって、ほしかった?」

黄瀬「!?…っ、そんなんじゃ…ないっス…」

「ふーん。…泊まってほしくなかったんだ。」

黄瀬「いやっ、そういう訳でもないっス!むしろっ…」


あれ…?

なんかこのパターンこそ、よくあるような…

俺、また彼女に翻弄されてないか…?

小悪魔もいいところに小悪魔だな。

なんか悔しい…!


「ふふ。ごめんごめん。またからかうような言い方しちゃった。黄瀬くん、表情がコロコロ変わってかわいいんだも」


ちゅぅ

と彼女の唇に自分の唇を押し付けた。

話してる途中だったけど、

俺は今そうしたくてたまらなかったんだ。

唇をゆっくり離すと、

彼女はすごく驚いてたみたいだった。

この顔が見たかった。


「…き、黄瀬くん…?」

黄瀬「…」

「ごめん、ね…怒っちゃった…?」

黄瀬「…」

「!…ごめん、なさい。…」


彼女は俯いて、本当にヘコんでいるように見えた。

なんか、こういうの新鮮かも。

普段学校では彼女はいつも凛としてて、

弱さを周りに見せまいとしてるし、

人前で落ち込むこともほとんどはい。

でも、本当は素直な子どもみたいなところもあるんだよね。

そういうところもひっくるめて、

俺は彼女が好きなんだ。


黄瀬「…藍っちからキスしてくれたら、許す。」

「!?…ん。…」


ちゅ

って触れるだけのキスだった。

かわいいし、それだけでもドキドキしたけど…


黄瀬「足りないっスよ、そんなんじゃ。」

「!…うーん…」


ちゅぅ

っと今度は長めのキス。

でも…やっぱり俺の方が限界だったみたい。


黄瀬「…よくできました。でも、まだまだ足りないっスよ…」

「んっ…」


俺から舌を絡めた深いキスをした。

彼女もすぐに応じてくれた。

まだ熱を帯びた彼女の華奢な身体を抱きしめながら、

二人だけの世界に浸った…




























つづく
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