KRB夢
□22nd
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黒子「何があったか、僕に話してもらえませんか?」
保健室での処置を終え、
先生が用事のため部屋を出ていった後、
黒子は開口一番そう言った。
「!…」
黒子「その怪我の原因は、本当は”自分で勝手に転んだから”ではないんじゃないですか?」
私の怪我は、軽い捻挫だと言われた。
保健室に入ってきた時、先生に経緯を聞かれた。
その時に私は咄嗟に”自分で勝手に転んだ”と言ったのだ。
突き飛ばされた、なんて、
言えなかった。
でも…
「…テツヤくん、見てたの…?」
黒子「!…僕が見たのは、藍川さんが座り込んでいたところからです。その前に何が起こっていたかは、見ていません。」
「…じゃあどうしてそんな…」
黒子「…じゃあ聞きますけど、どうしてあんな場所に一人でいたんですか?」
「!…それは…」
黒子「誰かに、怪我させられたんじゃないですか?」
ゆづきは、黒子にはもうごまかし切れないと思った。
自分の中に留めておくつもりだったが、
黒子には真相を話すことにした。
黄瀬のファンと思われる3人組に呼び出されたこと、
あれこれ好き勝手言われたこと、
最後に突き飛ばされたこと…
黒子は最後まで黙って聞いていた。
しかし、いつの間にか握られた拳に、
怒りが込められているようだった。
黒子「…許せませんね、その人達。名前、わかりますか?」
「!…いや、名前はわからないの。顔は覚えてるけど…」
黒子「だったらすぐに誰かは調べられますよね。その人達に謝罪してもらって、反省させるべきです。僕が探しますよ、写真とかあればすぐに」
「いいのっ…!」
ゆづきは黒子の言葉を遮る。
「…誰にも、言わないで。本人達にも、部活の人にも…」
黒子「黄瀬くんにもですか?」
「っ…黄瀬くんには絶対に言わないで…っ!?」
黒子「!…藍川さん…」
誰にも知られたくなかった。
これ以上、人に迷惑をかけたくなかった。
去年のあの時も…
大輝に迷惑ばかりかけちゃったから。
結局、大輝を傷つけて、離れることになったから。
黒子「黄瀬くんに心配かけるのが嫌だからですか?」
「…うん。…きっと、黄瀬くんは…テツヤくんと同じように言う気がするから…迷惑かけたくないの。」
黒子「迷惑なんかじゃありません。大切な人を守りたいって思うことは、自然なことです。僕にとっても、大事な友達…チームメイトを傷つける奴がいるなんて、許せないんです。」
「テツヤくん…」
黒子の言葉が痛いほど心に染みた。
ゆづきは嬉しいと思った。
こんなにも自分を大切に思ってくれる人がいたんだと。
黒子「一つ聞きたいのですが…」
「…ん?」
黒子「藍川さん、青峰くんとは別れて、黄瀬くんとそういう仲になったんですか…?」
「!?…」
黒子「黄瀬くんと、付き合ってるんですか?」
昔、テツヤくんと一緒に帰った時、
大輝と付き合ってるかどうか聞かれたことを思い出した。
その時と、今、
人は違えど答えの中身が変わらないなんて、
皮肉な話だ。
「…付き合ってはいないよ。」
黒子「!…そうですか。」
ゆづきは、前と違って、
黒子がすんなり納得した様子に逆に違和感を覚えた。
黒子「…でも、好きなんですね。黄瀬くんのこと。」
「!…え…」
黒子「しかも二人はすでに想いを通わせている。…違いますか?」
黒子がなぜこれほど的を得てくるのか、
ゆづきには不思議でしょうがなかった。
思わず、動揺が隠し切れずにいた。
「…えっと…」
黒子「すみません、僕も勝手なことを言ってしまいました。でも、藍川さんが黄瀬くんを大事に思っているのはよくわかりました。」
「…ん。…そう。私…好きなんだ、黄瀬くんのこと。」
黒子「僕なんかに打ち明けてくれて、ありがとうございます。でもよかったですね、両想いで。」
ん…?
そういえばさっきも、
”想いを通わせて”とかなんとか言ってたっけ…?
そこまで飛躍してるのはなぜ?
「あ、あのさテツヤくん。どうして、その…両想いって…」
黒子「ああ、すみません。ネタバレでしたら黄瀬くんに謝らなくては。僕はずっと前から黄瀬くんの気持ちを知っていましたから。藍川さんのことが好きだという気持ちをね。」
「!?」
ちょ、ちょっと待って…
テツヤくんまで知ってたの!?
大輝も知ってたみたいだし…
黄瀬くんってば、どんだけわかりやすかったの!?
私は本人から色々言われるまでは
何も気付かなかったけど!?
黒子「正直、青峰くんとのこと応援していました。二人が本当の恋人になったことも、自分のことのように嬉しかったです。」
「!」
黒子「青峰くんのことを考えると複雑ですが…黄瀬くんも一生懸命恋してましたからね。それに、藍川さんがどちらも好きになる理由はわかります。たくさん悩んだ時期もあったかもしれませんが、さっきの藍川さんの言葉には心が感じられました。」
「さっきの言葉…?」
黒子「藍川さんが黄瀬くんのことを”好き”だとはっきり言ってた時、とても乙女の顔をしていましたよ(笑)」
「!?…お、乙女って…なんか恥ずかしいよ!」
黒子にからかわれる日がくるなんて。
ゆづきは照れながらも、
自分が自然と発した言葉を大事にしたいと思っていた。
つづく