KRB夢
□23th
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その日の部活終わり…
急だけど彼女と一緒に帰ることになった。
彼女は、昼休みの出来事について聞きたいと言っていた。
あれからなかなかゆっくり話ができなかったし、
俺もまだ彼女に話したいことがあるからちょうどよかった。
久しぶりの二人の時間。
大事に過ごしたいな。
*
俺達は並んで歩き、
向かった先は彼女の家の近くの公園。
ベンチに腰掛けると、いつもより彼女が近くに座ったように感じた。
黄瀬「足、痛い?大丈夫?」
「ん、大丈夫だよ。もうだいぶ痛みは引いたから。」
黄瀬「…俺が代わってあげたい…」
「!…それはできないね。」
黄瀬「んー、わかってるけどさっ…元はと言えば俺のせいじゃん…」
「黄瀬くんのせいじゃないよ。」
黄瀬「…俺、ファンとかいらないのにな…」
好いてもらえるのはそりゃ悪い気しないけど、
なんで妬むわけ?
そしてそれをなんで実行に移すわけ?
理解に苦しむよ…
「今、全国の非モテくんを敵にまわしたね(笑)」
黄瀬「えっ!?」
「ふふ。…」
こてん
と腕に何かが当たるのを感じた。
恐る恐る見てみると、彼女の顔が俺の腕にくっついていた。
しかも、
う、上目遣いで見てるし…!
黄瀬「!?…ど、どうしたんスか…急に…」
「…こういうの、嫌?」
黄瀬「嫌じゃないっスよ…そんな訳ないっス。…ただ、ちょっと意外っていうか…」
「…私も、人並みにジェラシー感じちゃったみたい。」
ん…ジェラシー…?
黄瀬「えっ…!?」
「モテモテの人を好きになるのも、楽じゃないのね(苦笑)」
黄瀬「!…俺…?」
「うん。…だから、たまにはこうして、独り占め。」
黄瀬「!!」
そう言うと、
彼女は頭をぐりぐりと俺の腕に押し付けて、
距離をどんどん縮めてきた。
こんな風にわかりやすく甘える彼女を見たのは初めてで、
俺の心臓はドキドキしていた。
あまりに緊張して、彼女の方を見れなかった。
でも、彼女が愛しくてたまらなかった。
彼女の肩を抱き寄せて、囁いた。
黄瀬「いつでも独り占めしてよ。専売特許っス。」
「…ふふ。」
甘い雰囲気が漂っていた。
このままずっと、二人でいたいな…
「…そうだ。ねぇ、昼休みのこと教えて…?」
黄瀬「あぁ、そうか。…えっとね…」
*
俺はあれから彼女に途中までついてきてもらい、
嫌がらせをした3人を放課後呼び出すことにした。
放課後、人目のつかないところで3人と向かい合った。
奴らは何か勘違いしていたようで、
頬を赤くさせてソワソワしていた。
これから何が起ころうとも知らずに。
黄瀬「…結論から言う。もう、くだらない嫌がらせはやめてくれないっスか。」
知代「!…え…」
和美「な、何のこと…?黄瀬くん。」
黄瀬「うちのマネージャーに嫌がらせしたの、あんたらっスよね?」
深雪「…まさか黄瀬くん本人が来るとはね。やっぱりあの子とそういう仲なんだ?」
黄瀬「俺と彼女?チームメイトだから彼女を守るのは当然っスよ。何かやたら勘違いしてるみたいだけど、あんたらはどうしたいわけ?俺達が付き合っててほしいの?違うの?どっちなわけ?」
和美「それはっ…!」
知代「…」
深雪「…黄瀬くんはあの子が好きなの?」
黄瀬「…好きって言ったら、もう何もしないって約束してくれる?」
和美「!?」
黄瀬「つーか、約束しろよ。今後一切、彼女に手出すな。もしまた何かしたらお前ら3人ともタダじゃおかないから。」
3人「!…」
黄瀬「マジだから。何か不満があるなら正々堂々と勝負すれば?お前らは卑怯だよ。」
言いたいことは山ほどあった。
その全部を言えたわけではないけど、
奴らの表情を見る限り、結構こたえたのかな…?
俺は去り際に1人の女子に呼び止められた。
和美「黄瀬くんっ…!私…本当に黄瀬くんのこと好きだったんだよ…!?」
黄瀬「!」
俺は振り返って言った。
ありのままの気持ちを。
黄瀬「ありがとう。でも、俺は彼女が好きなんスわ。ごめんね。」
きっともう、彼女に嫌がらせはしないと思う。
そう感じた。
*
黄瀬「…」
「黄瀬くん?」
黄瀬「!…あ、ごめんごめん。何だっけ?」
「どうしてもう何もしてこないと思うの?」
黄瀬「…ん。なんとなくっスよ。」
「えー?なんとなく?」
告白されたことは彼女に話さなかった。
俺はあの時のあの子の言葉を信じようと思った。
”好きだった”
あの子はそう言ったから、
きっともう何もしてこないと思うんだ。
「変なの。…でも、私も信じようかな。きっともう、何もないって。」
黄瀬「うん、信じよう。一緒に。…万が一何かあったら、俺が守るから。」
彼女を優しく抱きしめた。
もう、この手を離したくない…
つづく