KRB夢

□23th
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その日、部活の開始時刻に彼女の姿はなかった。

どうしたんだろうと心配していると、

ミーティングで彼女が遅刻してくることを知らされた。

理由は語られなかった。

俺は、すぐにでも彼女に電話かメールをしたかったが、

練習がすでに始まった以上それは不可能だった。


彼女がいない練習は、

なんだか物足りなかった。



数時間後…

休憩中、ベンチに座ってスポドリを飲んでいると、

体育館の入口に彼女を見つけた。

しかし…


黄瀬「!?」


その異様な光景に、俺は思わず彼女の元へ走って行ってしまった。

彼女の隣には桃っちもいたのに。


黄瀬「っ…どうしたんスか…!?」

「!…あ…黄瀬くん。…」

桃井「!…あ、私ちょっとドリンク作ってくるね〜…」


気を利かせてくれたであろう桃っちは、

俺と彼女を二人きりにさせてくれた。

後でお礼言っておこう。


黄瀬「マジで、それ、どうしたんスか…?怪我…?」

「…うん、ちょっと、転んじゃってね。軽い捻挫。あ、見た目より大したことないのよ?大袈裟に包帯巻いてるだけ。ほら、びっこ引きながらだけど歩けるし!」


彼女の手には1本の松葉杖、

そして、その側の足首には包帯がぐるぐると巻かれている。

珍しく遅刻してきたと思ったら、

こんな痛々しい姿で現れるなんて。

俺は動揺していた。


黄瀬「本当に大丈夫なんスか…?折れてはいないの…?」

「うん、折れてないから平気よ。じきに治るわ。だからそんなに心配そうな目で見ないの。」


彼女は笑ってそう言ったけど、

俺は心配でたまらなかった。


黄瀬「…無理して部活来なくても…」

「捻挫しててもできることはあるし。あんまり休みたくないの。ただでさえ人手不足なのに、さっちゃん達にも迷惑かけちゃうし。」

黄瀬「…それは、部員としては、すみません。…」

「いや、謝らないでよ(笑)」


彼女は笑っていた。

無理に笑わなくてもいいのにね…


黄瀬「…ねぇ、藍っち。今日、一緒に帰ろう?俺、送ってく。」

「あ…ありがとう。気持ちはとても嬉しいけど…今日は、迎えに来てもらうことになってるの。柳さんに…」

黄瀬「!…そうっスか。それなら少し安心だけど…」

「うん。だから心配いらないよ!ごめんね。ありがとうね。」


車なら安心…

だけど、

そうじゃなくて、

俺は今日どうしても彼女と二人になれる時間が欲しかった。

一緒にいたかった。

なんか、嫌な予感がしたから…


黄瀬「あの…やっぱり俺、藍っちのこと見届けたいっス…!」

「!…」

黄瀬「少しでいいから、二人になれないっスか…?」

「…ごめん。今日は…まっすぐ帰って安静にしなくちゃ…」

黄瀬「!…そうっスよね。ごめん。わがまま言って…」


俺、ダサいな…

彼女は怪我人なのに、

二人になりたいとか…そんなわがまま言って。


二人になって、イチャイチャしたいとかそういうんじゃないよ?

ただ、一緒にいたかったの。

彼女の目の奥が、悲しそうだったから。

彼女が何かを抱えているようで、

不安だったから。


「…黄瀬くん、ありがとう。二人になるのは、また今度…ね?」

黄瀬「…うん。…」


ちょうどそのタイミングで休憩時間が終わった。

俺がコートに戻ると、

ミニゲームを終えた黒子っちと入れ替わりになった。

黒子っちはタオルを首にかけると、

他には目もくれず、彼女の元へ一直線だった。


黄瀬「!?…」


黒子っちも心配だったのかなって、

最初はそうとしか思っていなかった。

仲良さげに話す、彼女と黒子っち。

俺は横目で見た後、練習に集中しようと意識を変えた。
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