KRB夢
□24th
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ぎゅっときつく抱きしめていたら、
彼女も腕をまわして俺を抱きしめ返してくれた。
彼女と抱きしめ合っていると、
このまま時間が止まってほしいとさえ思う。
黄瀬「離れたくない…」
「!…うん。」
心の中で言ったつもりが、
口に出していたみたい。
黄瀬「!…聞こえてた?」
「聞こえてたよ、バッチリ。」
黄瀬「恥ずかしい…」
「ふふ。…まだ時間平気?」
黄瀬「!…えっ…」
「私も…一緒にいたい、よ。」
黄瀬「…!」
*
俺達は、二人きりになれる場所へ向かった。
俺の心臓のドキドキは、今までで一番うるさくなっていた。
だって、俺達が来たのは…
コンコンッ
ガチャッ
「…ねぇ、オレンジジュースで平気?」
黄瀬「う、うん…!あ、ありがとう!気遣わせてごめん、ね…?」
彼女の家に来た。
来てなんだけど、正直ドキドキがおさまらない…
まさか急にこんな展開になるなんて、
思ってもみなかったから。
彼女が持ってきてくれたジュースを飲む手が震える。
その動揺具合は彼女にもわかるほどだった。
「…緊張、してる?」
黄瀬「!…ご、ごめんっ…」
「謝らないでよ。」
彼女は優しく笑って言った。
俺とは違って落ち着いているみたいだった。
俺もできることなら平静を装いたいけど、
なかなか身体が言うことを聞いてくれない…
「…ごめんね?」
黄瀬「えっ!?な、何がっスか…!?」
「心の準備、必要だよね。家に行くって。急に誘って、ごめんね。」
黄瀬「いやっ…本当、藍っちが謝る必要ないっスから!俺っ…確かにちょっと…いや、だいぶ?(苦笑)緊張しちゃってるんスけどっ…決して来たくなかった訳じゃないし…むしろ、いつかは行きたいと思ってたし、夢みたいっていうか…」
「夢みたい、か…ふふ。」
黄瀬「あっ…なんか、俺…かっこ悪いとこばっか見せてるっスね…(苦笑)」
俺、こんなに女々しかったっけ?
こういう時こそ男らしく堂々としていたいのに…
「かっこ悪くなんかないよ?前にも言ったけど、黄瀬くんのそういう素直なところ、いいなって思うの。」
黄瀬「えっ…!」
「それに…黄瀬くんの緊張が、嬉しいよ?」
黄瀬「!?…緊張が、嬉しい…?」
「うん。だって、緊張してくれてるってことは…意識してくれてるってことかなって。…」
彼女には本当…参るよ。
どんだけ俺の心をくすぐるんだろうか。
彼女に、してもらってばかりじゃダメだよね。
俺は彼女の手を握った。
黄瀬「意識、しまくってるっスよ。好きな子の部屋に来て、二人っきりでいて…意識しないわけないっス。」
「!…ん。私も、結構緊張してるんだよ…?」
黄瀬「そ、そうなんスか…?藍っち、めっちゃ落ち着いて見えたんスけど…」
「落ち着いたフリしてたの。…なんてね。」
ぎゅっ
と、彼女の方から俺の背中に腕をまわしてくれた。
余計に胸のドキドキが速まるような、
それでいて、心地よく妙に落ち着くような、
そんな不思議な感覚に陥った。
俺も彼女の背中に腕をまわして、
包み込むように抱きしめた。
「…あったかい。」
黄瀬「うん、俺も。…」
「…鼓動がよく聞こえる。トクトク、って。」
黄瀬「…俺の場合、藍っちには緊張を隠せないんス(苦笑)」
「ふふ。…黄瀬くんといると、幸せだな。」
黄瀬「!…え…」
俺は思わず彼女を解放して、
彼女の顔をじっと見てしまった。
「幸せ、だよ。好きになった人に…黄瀬くんに好きになってもらえて、私は幸せ。」
黄瀬「…そんなこと言うの、本当ずるいっスよ…」
「正直に言ってみただけよ?」
黄瀬「…それがずるいんスよ…」
俺は彼女をぐいっと引き寄せ、
彼女の唇を塞いだ。
強引だったからか、彼女も少しびっくりしていたみたい。
でも、すぐに俺とのキスに応じてくれた。
唇が離れると、至近距離で見つめ合う。
お互い、少しだけ息が上がっていた。
黄瀬「…俺も幸せっスよ。本当に。藍っちに好きになってもらえて、本当に嬉しいっス。」
「ふふ。言われるの、恥ずかしいな。嬉しいけど。」
黄瀬「本当、大好きっス…」
再び深いキスを始めた。
溶けて一緒になりたかった。