KRB夢

□9th
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さっきまでのハードな練習の疲れを感じさせないほどの全力疾走で、

青峰はゆづきの待つカフェへと向かった。

普段かかる時間の半分くらいで到着。

珍しく息は切れていた。


青峰「はぁっ…ゆづっ!」

「!…あ…」

青峰「わりぃっ…遅くなって…すげぇ待たせたよなっ…」


ゆづきのコーヒーカップはすっかり空になっていた。


「…もう3杯、飲み終わったんだけど。」

青峰「本当に悪かった。この通り!…」


青峰はガラにもなく、手を合わせながら深々とお辞儀をした。

ゆづきには基本的に頭が上がらないのである。


「…ふふ。キャラじゃないよ、大輝。もういいからさ。座りな?」

青峰「!…お、怒んねぇのかよ。」

「うん?」

青峰「なんで…俺、携帯の充電切れてて連絡もできなくて…」

「心配はしたよ?何かあったのかなって。でも、こうして来てくれた。だから安心したよ。」

青峰「ゆづ…」


青峰は胸が痛くなった。

そして同時に、ゆづきのことが今まで以上に愛しくなった。

今すぐにでも抱きしめたい衝動にかられたがなんとか理性で抑えた。


「早く座りなよ?喉乾いたでしょ。アイスコーヒーにする?」


青峰はゆづきの正面に座り、静かに頷いた。


数分後、アイスコーヒーが運ばれてきた。

青峰は本当に喉が乾いていたらしく、一口でコップの半分くらいに減ってしまった。

それを見てゆづきは思わず少し笑ってしまった。


青峰「…遅くなって本当に悪かったな。帰り、送るから。」

「もう謝らなくていいよ。私も宿題終わらせたし。データの整理もできたし。有意義な時間だったよ?」

青峰「そうか。…」

「まあ、どうして遅れたかの理由だけは聞いておこうか?」

青峰「!…それは…」


黄瀬とのことを言うべきか言わないべきか迷う青峰。

黄瀬の、ゆづきに対する気持ちは言う訳にはいかない。


「言えないことならいいよ?」

青峰「ん…黄瀬と、ちょっと話してたんだ。」

「黄瀬くんと?二人で?」

青峰「あぁ。帰ろうと思ったら、部室で会ってよ。それで…つい長話になっちまった。ごめん。」

「そう。…あ、また謝った。本当にもういいのに。」


ゆづきはまた少しだけ笑った。

青峰はまだ申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
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