KRB夢
□9th
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カフェを出て、二人は並んでゆづきの家の方向へ歩く。
すると、何かを思い出したかのようにゆづきは口を開いた。
「そういえば大輝、マッサージしてないよ?腰痛むんだっけ?」
青峰「!…あぁ、あれは…もういいんだ。大丈夫。」
「え?…うーん、数値的にはそこまでものすごく悪いわけではないみたいだけど…良いわけでもないよ?マッサージするよ。」
ゆづきは毎度のごとく、その特殊な眼で青峰の身体をじっくりと見て各部位の状態を確かめた。
青峰「…あれは…お前にマッサージ頼んだのは、口実だから。」
「え…?」
青峰「ゆづが…黄瀬と仲良さげに話してんのが、気に食わなかったんだよっ。…」
ゆづきからわざと目をそらして、照れ臭そうに言う青峰。
ゆづきもこれほどまでに素直な青峰に驚き、目をパチパチさせてボーっとしてしまった。
青峰「…何だよ。ジロジロ見て。」
「いや…」
青峰「っ!?」
ゆづきの手が青峰のおでこに触れる。
突然のことにびっくりして身を引いてしまった青峰。
「熱はなさそうね。…うーん。」
青峰「人を病人呼ばわりすんなよ。」
「だって、大輝がそんな風に言うなんて初めてじゃない。頭でも打った?練習のし過ぎでおかしくなっちゃった?」
青峰「あのなぁ…っ!俺だって…」
その時、
ぎゅっとゆづきの手が青峰の手を握った。
青峰「!?…ゆ、づ…」
「…ねぇ、さっきのって…」
青峰「ん…?」
「ヤキモチ、ってやつ?」
ゆづきは小さく問う。
青峰はゆづきの手をぎゅっと握り返しながら答えた。
青峰「…そうかもな。」
「”かも”って何よ。」
青峰「いや…そう、です。」
「…ヤキモチ妬いてもらえると、こんな感じなんだね。」
青峰はゆづきの気持ちを確かめたかった。
自分と同じであってほしい。
それが青峰の願いだった。
青峰「ゆづ…」
「ん?」
青峰「…俺がもし…ゆづ以外の女と…キスとかしてたら、どう思う…?」
「!?…」
ゆづきは思わず青峰から身を引いて、青峰のことをじっと見つめた。
青峰「いや、もしもの話だぞ?…」
「…大輝、好きな人でもできたの?」
青峰「いや、だから例えばの話だって。」
少しの間、沈黙になった。
ゆづきは凛とした表情ではっきりと告げた。
「…やめる。」
青峰「!…え?」
「大輝と二人で会うの、やめる。」
あまりにもクールに言われたため、青峰も少し動揺したようで…
青峰「そ、そうかよ。…つーか、もしもの話だからな?俺、ゆづ以外の女に触れることすらしてねぇからな?いや、まともに話すことすらしてねぇかも…」
「…どうしたの、急に。やっぱり練習のし過ぎ?(笑)」
くるっと後ろを向いて、ゆづきは再び歩き出した。
ゆづきにとってはあまり話したくない話題だったのかと青峰は直感した。
ゆづきは青峰の唐突な質問に疑問を抱いたが、それ以上詮索しなかった。
青峰もそれ以上何を言ったらいいかわからなくなっていた。
だが、はっきりさせるべき時がきているとも思っていた。
ゆづきの本当の気持ちを知るのは確かに怖い。
好きだと告げたらゆづきが離れていくんじゃないかって、
そんな恐怖に怯えて今までうやむやな関係を続けてきた。
本当はもう、このうやむやな関係は終わりにしたい。
改めて、恋人として一緒にいたい。
そう伝えようとして、もうどれだけの月日が経ったか。
青峰は覚悟を決めようとした。