KRB夢

□12th
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次の日は部活を休んでしまった。

突然の事態を消化しきれず、ひどい頭痛と胃痛になってしまった。

それに、征と顔を合わせるのが怖かった。

お母さんは寝込む私を心配してくれたが、ロクに話もできなかった。

私が征を好きだという気持ちは知らなかったからか、私の落ち込みようは想像以上だったらしい。


その次の日は部活を休むわけにはいかなかった。

マネージャーの一人が事前に休むことを知っていたから。

みんなに迷惑をかけるわけにはいかなかった。


部活へ行くと、また胃がひどく痛んだ。

征とどんな顔で会えばいいのかわからなかった。

征も、私と同じタイミングでお父さんから話をされていたらしく、征の出方も気になっていた。


部活着に着替えて、体育館に向かう足取りはかなり重かった。

思わず視線は下に向いていた。

神様は、早速私に試練を与えた。

視界に入ったのはよく見知ったバッシュ。

恐る恐る顔を上げると、そこには征が立っていた。


「!…」


目が合うと、お互い足が止まった。

私は一瞬息ができなくなったかのような症状になった。


赤司「…体調は、もう大丈夫なのかい?」

「!?…っ…」


私は静かに頷くしかできなかった。


赤司「…父さんから話を聞いた。君も…母親から聞いたんだろ?」

「…っ…」


もう、涙が零れ落ちそうになっていた。

彼はちゃんと普通にしてくれているのに。

私は全く平常心を保てていなかった。

すると、彼は私のすぐ側に近付いてきて話を続けた。


赤司「…部活が終わったら二人で話をしたい。それまでなんとかがんばれるかい…?」

「…っ…う、ん…っ」


声を振り絞って言った。


赤司「じゃあ…また後で、必ず。…」


去り際に頭を優しくぽんっとされた。

征が何を考えているかわからなかった。

ただ、言えることは、征は必死で私に向き合ってくれた。

やはり私より精神が大人だ。

また尊敬してしまった。

征に助けられてばかりで、自分が少し情けなかった。


その日の部活をなんとか終え、着替えも済ませた時のこと。

征とどのように落ち合えばいいかと部室で悩んでいたら、征からメールが届いた。

学校からは結構離れたとある公園で落ち合おうとのことだった。


数十分後、公園にたどり着くと、ベンチに腰掛けて待つことにした。

周りには誰もいなかった。

それほど待たずして、征がやって来た。

胸が締め付けられ、胃の痛みも再開した。


赤司「待たせてしまったね。悪かった。」

「…っ」


首を横に振った。

言葉を発したくても喉の奥に何か詰まっているのかと思うほど、言葉が出なかった。

私の隣に腰掛ける征。

その距離は微妙だった。


赤司「…」

「…」


しばらく沈黙が続いた。

これまで征から色々話してくれていたから、征がこれほどまでに黙っているのは珍しかった。

私も何か気の利いたことを言いたかったけれど、その時の私には到底無理だった。


赤司「…血が繋がっていたこと、知らなかったのか…?」

「!…っ。知らなかった、よ…」

赤司「そうか。俺も一昨日初めて聞いたよ。…正直、かなり驚いた。」


驚いたのは私も同じ…だけど、征はその後どう思ったのだろうか。

聞きたいような聞きたくないようなこと。

これからどうやって接していけばいいのか、私は予想もつかなかった。


赤司「…まさか、君と俺が兄妹だなんて、な…」

「…っ」

赤司「…父さんを恨むよ。」

「!…え…」

赤司「君の母親にも、多大な迷惑をかけただろうね。聞けば、今でも父さんは君の母親には頭が上がらないそうだ。」

「…」

赤司「…君も、幼少の頃から苦労を重ねてきたんじゃないか?」

「…っ…うっ…」

赤司「…藍川…」


征は気を使ってかずっと私に話かけてくれていた。

それが痛いほどわかっていたのに、私はロクに返事もできず、相槌も打てず、うつむいて泣くのを堪えるしかできないでいた。

征もきっと、私が泣きそうなのをわかっていたんだと思う。


気付いたら視界が狭くなり、ぎゅっと抱きしめられた。

バスケ部の中では小柄な征。

今まで男の子に抱きしめられたことなんてないけど、腕はやっぱり男の子な気がした。


「うぅ…うっ…」

赤司「…どうして泣いているんだい?…」

「っ…うぅ…ひっく…っ…ご、め…っなさ…!?」


首元に冷たさを感じた。

一粒の水滴が落ちたようだった。

恐る恐る顔を上げてみると、静かに涙を流す征がいた。
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