KRB夢

□13th
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数時間後の駅にて。

黄瀬はモデルの仕事を終えて帰宅するところだった。


あー、疲れたぁ。

久々に撮影すると結構体力使うんだよなぁ。

メイクの時間や待ち時間が長い長い…その間に練習できるっつーの。

やっぱり今後はモデルの仕事もっと減らしてバスケに集中してぇなぁ…


あー、腹減った。

何か食べて帰ろうかなぁ。

家にご飯あるかなぁ?

母さんに電話して聞いてみっかー…

ん?

あれはもしや…んん!?


俺は無意識のうちに身体が先に動いていた。

走って追いつくとトントンっと彼女の肩を叩いた。

その柔らかい髪がふわっとなびいて彼女はこちらに振り返った。


「!」

黄瀬「どもっス。…藍っち。」


声かけておいてなんだけど、正直かなりびっくりしてる。

まさか一日の間に二度も彼女に会うなんて。


「黄瀬くん!?どうして…」

黄瀬「いやぁ、今日はちょっと撮影があって…その帰りなんスけど…」

「モデルの撮影?そっか…最近もお仕事してるんだね。前より減らしてるって聞いたけど?」

黄瀬「えっ、何で知ってるんスか!?」

「前にさっちゃんに聞いたの。レギュラーになったから部活に集中するって。でも多少はやってるんだね。」


あ…その格好でちょっと笑ってくれるとか、ずるいっス。

思えばこうしてお互い私服で会うなんて初めてかもしれないな。


「…ねぇ、今着てるのって私服?衣装?」

黄瀬「え…私服っスけど…」

「へぇー、黄瀬くんってさすがオシャレさんなんだね。かっこいい。」

黄瀬「ぅえっ!?」


か、か、かっこいい!?

俺が!?

藍っちの口からそんな言葉が聞けるとは…っ

空耳じゃないよね!?

いやいや、あくまでかっこいいのは服のことだ。

調子に乗るんじゃない、俺!


「そういう格好、私好きだな。黄瀬くんにもすごく似合ってるね。」

黄瀬「いやいやいや…そんな褒めないで…マジ照れるっス。」

「あ、顔赤い。ふふ。」


笑われちゃったっス。

俺、なんかからかわれてる?

藍っちといると俺が照れたり動揺したりすることばっかりだ。

それは俺が藍っちのこと好きだから、かなぁ。


黄瀬「そんなことよりっ!…藍っちの方が、ギャップ萌えでずるいっス。」

「え?ギャップ萌え?」

黄瀬「…私服、最近はそういう感じなんスか?前見た時は違う系統だったと思うけど。今日はめっちゃ清楚系っスね。」

「あ…あぁ、私の服か。…今日はちょっと、特別な用事だったから…珍しい格好しちゃった。知り合いに見られるのはなんだか恥ずかしいな。」


知り合いって…赤司っちには見せてるじゃないスか。

知ってるんスよ、今日会っていた相手が赤司っちだって。

ていうか、赤司っちとどこに何しに行ったんスか…?

特別な用事って何スか?

赤司っちとはやっぱり何かあるんスよね…

聞いてもいいものなのかな。


黄瀬「…めちゃくちゃ似合ってるっス。かわいいっス。」

「えっ…」

黄瀬「…かわいいっスよ、藍っち。」

「!」


女の子に、面と向かって”かわいい”なんて言ったの初めてだ。

今まで色んな女の子と話して、

俺、”かっこいい”って言われたことはあったけど、

”かわいい”って言ったことはなかったや。

俺、自然と言葉にしちゃった。

それくらい、今、目の前の藍っちは本当にかわいいや。


「…や、やめてよね。黄瀬くんも口が上手いのね。」

黄瀬「!…」


黄瀬くん”も”って…

俺以外の誰かにも”かわいい”って言われたんスかね。

はぁ、つくづくライバルの存在が気になるわ。

でも、藍っち、ちょっと顔赤い…?


黄瀬「…藍っち、ちょっと時間あるっスか?」

「え?」

黄瀬「俺と、お茶しないっスか?」

「!」


誘ってしまった。

でも、このまますんなりバイバイするのは嫌だったっス。

せっかく会えたチャンスを逃したくなかった。
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