KRB夢

□13th
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俺達は駅近のファストフード店に入った。

適当に注文をして、二人席に向かい合って座る。

こうして外で彼女と二人で食事をするのは初めてだ。

俺は自分から誘っておいてなんだけど、緊張していた。


「…黄瀬くん、結構食べるねぇ。さすが男の子。」

黄瀬「そうっスか?俺は普通よりちょっと食べるくらいで、もっと食べる奴いるっスよ。」

「そう?…あー、でも、大…」


彼女がそう言いかけた後少し間があった。

不自然だと思った。


黄瀬「だい?」

「…大輝くんとかもものすごい食べるよね。あとあっくんも。」


”大輝くん”か…

青峰っちの話が出るとどうも心がチクチクするや。

あんまり聞きたくないっていうか。

でも、色々はっきりさせたいことはある。

まずは今日のことからだ…


黄瀬「…ところで、今日のことなんスけど…」

「ん?」

黄瀬「俺、実は昼間にも駅前で藍っちのこと見かけたんス。仕事行く前に。」

「えっ、そうなの?」

黄瀬「うん、それで…見ちゃったんスよね。…赤司っちといるところ。…」

「!」


彼女は目を見開いて驚いていた。

やっぱり、見られたくはなかったのかな…?

訳ありだから…?


黄瀬「ごめん。言いたくなかったらいいんスけど…藍っちと赤司っちって、どういう関係なんスか…?」

「…」

黄瀬「…何か特別な事情があるんスか…?」


藍っちはしばらく口を開こうとはしなかったが、

数分後に下を向いていた顔を上げ、俺の顔をじっと見た。


「…黄瀬くん。秘密、守れる?」

黄瀬「えっ!?あ、うん。守れるっス。ていうか、絶対守るっス。藍っちが内緒にしてほしいんなら…」

「そう。じゃあ内緒にしてほしい。けど、黄瀬くんには話すね。」


藍っちは決意をしてくれたみたいだった。

俺の為にごめんなさいって感じだけど、

俺には話してもいいって、

何でそう思ってくれたんスかね。


「…赤司くんとは、異母兄妹なの。」

黄瀬「!?…異母兄妹…?」

「うん。今日はね、赤司くんと、赤司くんのお父さんに会ってきたの。まあ、私のお父さんでもあるんだけどね。」


ちょっと待って…

何か特別な事情があるとは予想していたけど、

兄妹とは思いもしなかった…

異母兄妹って、母親が違うってことっスよね?

確か赤司っちのお母さんは病気で亡くなってるって聞いたような…

で、藍っちのお母さんは後妻ってこと?

赤司っちと藍っちは、同い年で兄妹…?

あー!なんか混乱してきた!


「黄瀬くん、頭の上にハテナがいっぱい見えるよ。落ち着いて?」

黄瀬「あ…ごめん。ちょっと混乱してたっス…びっくりして…」

「驚いたよね、きっと。皆も知らないことだから、一応内緒にしておいて?征も多分、あれこれ聞かれるのが嫌で黙ってるんだと思うから。」

黄瀬「”せい”…?」

「あぁ、ごめん!赤司くんのことね。」


赤司っちのことは”征”って呼んでるんスか。

へぇー…知らなかったや。

緑間っちは”真ちゃん”で、

紫原っちは”あっくん”で、

青峰っちは”大輝くん”で…

いや、これに関しては二人の時は違う呼び方かもしれない。

でもって、

赤司っちは”征”か…


俺は?

”黄瀬くん”かぁ…。

なんか、遠いなぁ。


「黄瀬くん?大丈夫?」

黄瀬「!…あ、うん。ごめん。いやー、マジでびっくりしたっス。」

「謎は解明されたかな?」

黄瀬「…そうっスね。色々聞いてみたいことはあるけど、徐々に知っていければって感じっス。藍っちのこと、藍っちの周りのこと、結構気になっちゃうんスよね。」

「え…?」

黄瀬「…あ!いや、これは別に深い意味はなくてっ…その…なんていうか…」


俺としたことがバカ正直に何を言ってるんだ!

気になってますって言っちゃってるし!

アホかー!

半分告白してるようなもんでしょ!


「…ふふ。あはは。」

黄瀬「!?…何で、笑うんスかー。藍っち。」

「ごめんごめん。黄瀬くんって本当に顔が正直よね。ある意味うらやましい。」

黄瀬「!…うらやましいって?こんなバカ正直がっスか?」

「正直になれるって、簡単なようで難しいと思うから。黄瀬くんの飾らないところ、私は尊敬してるの。」

黄瀬「!?」


藍っちが俺を尊敬してるだって…?

そんなバカな。

俺が藍っちのこと尊敬してるんスよ。

分析力やマッサージ力、

頭が良くて、実は運動神経も良くて、

気配りができて、皆に優しくて…

偏見を持たずに接してくれるところもすごいと思うの。

そんな藍っちだから、

俺は好きになっちゃったんだ。


黄瀬「…俺の方が、藍っちのこと、尊敬してるっス。」

「またまた。お世辞が上手ね。」

黄瀬「お世辞じゃないっス!マジで、藍っちのこと…」

「…ん?」

黄瀬「…す…ごい…と、思ってるっス。…」


俺、

今、”好き”って言いそうになった。

制御できてよかった。

まだ伝えるのは早い。

きっとまだ、彼女の心の中には別の男がいるだろうから。


「…ありがとう、黄瀬くん。ちょっと恥ずかしいけど、嬉しいよ。」

黄瀬「!…俺も、喜んでいいっスかね?」

「うん、本当のことだからね。私、黄瀬くんには結構色々話しちゃってる気がする。変に力入れずに話せるの。あ、褒め言葉だよ?」


あぁ…俺はそういうポジションなわけね。

つまりは俺と一緒にいてもドキドキしたりはしないし、

何とも思ってないから気兼ねなく話せるってわけか。

あー、なんかグサっときたわ。

俺のこと、男として見てくれる時は来るんスかね?


俺は、ちょっと勝負に出てみたくなった。


黄瀬「…俺は、藍っちと一緒にいると、緊張しちゃうんスけどね。」

「え…」

黄瀬「良い意味での緊張っスよ。二人きりで話す時はいつも。…」

「!…そう、なの?え、いつも…?」

黄瀬「藍っちのこと、意識しちゃってるからっス。…」

「!…意識って…」

黄瀬「藍っち。俺のこと、少しだけ、男として見てくれないっスか?」

「!?」


言っちゃった。

俺の彼女への気持ち、バレちゃったかな…?
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