KRB夢
□14th
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次の日…
黄瀬は寝不足による早起きを理由に、朝早くから体育館で自主練をしていた。
頭の中は彼女のことでいっぱいだった。
黄瀬「…はぁ。…よっと…」
ガゴッ
っとリングの淵に当たって入らなかったボールは、何度かバウンドしてコロコロと転がっていった。
俺は大きなため息をついた。
バスケに支障が出るのは嫌だった。
黄瀬は転がっていったボールを取りに行こうとすると、
そこにはボールではなく誰かの足元が視界に入った。
ゆっくりと見上げると、黒子がいた。
黄瀬「黒子っち…!?」
黒子「おはようございます、黄瀬くん。」
黄瀬「びっくりしたっスよー!おはようっス。黒子っちも自主練?」
黒子「はい。でも、黄瀬くんがこっちの体育館で自主練なんて珍しいですね。」
黄瀬「あー…ちょっとね。一人で集中したくてさ。…」
黒子「…ボクはお邪魔のようですね。」
黄瀬「いやっ、そんなつもりで言ったんじゃないっスよ!ごめん、黒子っち!全然、いていいから!はい、練習練習ー!」
黄瀬の態度が空元気だということが黒子にはわかっていた。
黒子は一昨日の朝のことを思い出していた。
ゆづきも同じような態度をとっていたことを。
黒子「…黄瀬くん。」
黄瀬「んー?何スか?」
黒子「何か、ありましたか?恋愛絡みで。」
黄瀬「!?…な、何でわかっちゃうのー?えっ、黒子っち、エスパーの才能もあったの!?」
黒子「声が大きいです。それに、黄瀬くん見てたら嫌でもわかります。ちなみにエスパーじゃありません。」
黄瀬「”嫌でも”って何スか!ちょっとひどいっ」
拗ねる黄瀬を見て、黒子は少し笑ってしまった。
黒子「黄瀬くん、よかったら話聞かせてもらえませんか?」
黄瀬「え…」
黒子「力になれるかどうかはわかりませんが、今の黄瀬くんはちょっと心配になります。」
黄瀬「!…黒子っちぃぃぃ(泣)」
黒子「あ、そういうのはいいので、とりあえず早く話して下さい。時間も限られていますので。」
黄瀬「黒子っち、冷たいっ!(泣)」
さすが元教育係。
黄瀬にはちょっぴりドライな黒子であった。
俺は、話せる限りのことを黒子っちに話した。
もちろん俺以外の人物の名前は伏せて。
黒子っちは最後まで黙って聞いてくれていた。
黄瀬「俺は、難しい恋を選んじゃったんスかねー…」
彼女には青峰っちがいる。
あの二人は正式な恋人になるかもしれない。
もしかしたらもうすでになってるかもしれない。
あの日、青峰っちと一緒に帰った日に…
俺はあの時、強引にでも阻止するべきだったのかなぁ。
でも、そんなのフェアじゃないよね。
向こうが有利なのは、今に始まったことじゃないんだし。
黒子「話は大体わかりました。聞かせてくれてありがとうございます。…黄瀬くんは、彼女と付き合いたいんですか?」
黄瀬「…うん。付き合いたいっスよ。好きだもん。」
黒子「その彼氏同等の人から奪ってでも?」
黄瀬「…奪うってのはちょっと違うかも。もしそうしたら、彼女とその彼を傷付けることになるだろうから…」
黒子「じゃあ、諦めるんですか?」
矛盾していると思う。
けど、彼女を傷付けたくはないし、できることなら青峰っちのことも傷付けたくない…
じゃあ俺が身を引くのが一番だよね…
でも…っ!
黄瀬「…諦めるのは、できないっス。どうしようもなく、好きになっちゃったんスよ…」
あっさり自分の気持ちを捨てられないから、困っているんだ。
俺のわがままかもしれないけど、
彼女がいつか俺のことを好きになってくれたらいいなって、
そう思っちゃうんだよね…
叶わないことかもしれないけど。
黒子「…黄瀬くんが、彼女を本気で好きなのはわかりました。ですが、こればかりは辛抱するしかないと思います。彼女は今、別の男性と両想いなんですよね?」
黄瀬「…うん、多分そう。…99.9%そう。」
黒子「…では、0.1%に賭けるしかないですね。その0.1%は、黄瀬くんが心の中で願っている、彼女と結ばれたいという希望ですよね?」
黄瀬「!…そう、かも。」
黒子「諦められないなら、自分の気持ちが続くまで密かに想い続けてもいいとボクは思います。想うだけなら、タダですから。」
黄瀬「!…黒子っち…」
そうか…
想ってるだけならいいのか…
そしたら、がんばって諦めなくてもいいってことだよね…?
俺、今のところ諦めるのは本当にできそうにないもん。
彼女が傍にいる限り、多分無理だ。
黄瀬「…俺、そうするっス。諦めない。自分の気持ちが続くまで、密かに想い続ける。…もうバレてる可能性大だけど(苦笑)」
黒子「バレてるって…何か思い当たることでもあったんですか?」
彼女を抱きしめてしまったことを黒子っちに話した。
すると…
黒子「あーあ、やっちゃった。」
黄瀬「!?」
黒子「黄瀬くん、見損ないました。…ったく、これだから最近の若い子は…」
黒子っち、なんかキャラ変わってるんスけどっ…!
こ、怖い…!(泣)
黄瀬「あー…でも、ハグだけっスよ?それ以上のことは何も…」
黒子「ハグでも十分です。相手は女の子ですよ?拒否したくてもできない時があると思います。」
黄瀬「!」
そうだよね…
彼女の場合、去年のあの事件のこともあるし…
好きでもない男に触られること自体、嫌だったかもしれない。
あぁ…俺としたことが…理性失っちゃダメだよな…
黒子「…触れたくなる気持ちはわかりますが、今はダメです。恋人になってからにして下さい。」
黄瀬「!…ハイ。すみません。…って!黒子っちも誰かに触れたいって思ったことあるんスか!?」
黒子「!?…ボクの話はどうでもいいです。今は黄瀬くんの話でしょう。」
黄瀬「えー、黒子っちの恋話とか気になるっス!教えてよー!」
黒子「丁重にお断りさせていただきます。」
黒子っちの恋話は聞けなかったけど、俺は少しスッキリしていた。
黒子っちのおかげで喝も入れてもらえたし!
理性だ!
理性を失わないように、彼女のことを密かに想うんだ…!