KRB夢

□15th
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しばらくして、一人になったゆづきは別の体育館に向かっていた。

これは一種の賭けだ。

青峰がそこにいる保証はない。

それに、いたところでどんな言葉をかけるべきかまだ決めていなかった。

それでも、さっきまでの青峰の態度の異変がやはり心配だった。

少なからず、何かしらの理由で自分が関わっていると直感したから責任を感じていた。

ゆづきは行動をせずにはいられなかった。


体育館の前に着くと、確かにボールをつく音がする。

キュキュッとバッシュが床に擦れる音もする。

ゆづきは意を決してそのドアをゆっくりと開けた。


賭けは、当たった。


スパッとゴールに入ったボールは、ゆづきの方に向かって転がってきた。

ボールを拾い上げると、自然と青峰と目を合わせることになった。


青峰「!?…何しに来たんだよ。」


想像していた通り…いや、それ以上に冷たい態度をとられてしまい、思わず息を飲むゆづき。

それを落ち着かせるように、持っていたボールをそれなりの勢いをつけて青峰にパスした。


これ以上、青峰の機嫌を悪くさせたくない。

けれど、何をどう言うべきかはまだ考えがまとまっていなかった。

少しの間沈黙になり、ゆづきはゆっくりと口を開く。


「…大輝のこと…探しに来た、の。…」

青峰「!」

「今日の部活中、ずっと…何か変だったから…心配で。それに…」

青峰「別に心配されるようなことねぇんだけど。」


ゆづきは言葉を続けようとしたが、青峰はそれを遮るように言い放つ。


「…そう、なの。…」

青峰「…」


再び沈黙が続く。

青峰は、何事もなかったようにゆづきから視線を外し、再びドリブルを始めた。

体育館には、青峰がボールをつく音だけが響いていた。


ゆづきはいたたまれない気持ちになり、青峰に背を向けてその場から去ろうとした。


「(きっと、今は、私と関わりたくないんだ。…)」


青峰を必要以上に刺激しないようにと、静かにドアを開けようとしたその時…


青峰「ゆづ…っ!」

「!?」


突然の大声に驚き、ゆっくりと振り返った。

青峰はもうドリブルをやめていて、ボールを持ったままゆづきの方を見ている。


青峰「…お前…好きな奴いんだろ?」

「!」


一瞬、時が止まったように思えた。


「…へ…?」

青峰「好きな奴いるんだったらよ、俺とキスとかしてんじゃねぇよ。…それとも…」


突然そんなことを言われ、ゆづきは放つ言葉も見つからず、立ち尽くすことしかできない。

徐々に、ゆっくりと近づいてくる青峰。

ゆづきの目の前まで来ると、鳴り響いていた足音も止まった。


青峰「…赤司ともそういうことしてんのか?」

「!?」


今までで一番と言っていいほど目を大きく見開くゆづき。

息をするのも一瞬忘れたくらいだ。

青峰の視線は鋭く、でも、どこか悲しいような目をしていた。
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