KRB夢

□20th
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部活の時間が迫っていた。

いつもより早めにHRが終わったから、

部室に着いたのも早かった。


ガチャッ

とドアを開けるのと同時に、

部室内にある資料部屋から彼女が出てきた。


「あ…」

黄瀬「!…お、おはようっス!」


お互いにびっくりした表情のまま数秒間見つめ合った。


「お、おはよう。今日は早いね?」

黄瀬「うんっ、HR短かったから…」

「そう。…」


俺達、

普通に話せてるか…?

なんかぎこちないって感じるのは俺だけ?

まあ無理もないか。

はっきり言って、もう今はただの友達でもないんだし。

…まあ恋人でもないんだけど。


「まだ誰も来てないから今言うけど…昨日はありがとうね。送ってくれて。」

黄瀬「いやいや、当然のことをしたまでっスよ。…あ、今日も送っていこうか?その方が危なくない」

「今日は…」


彼女が俺の言葉を遮った。

珍しく、力強い声だった。


「今日は、大丈夫だから。…」

黄瀬「でも、またあいつらに待ち伏せでもされたら…っ」

「今日、大輝に話すつもり。」

黄瀬「!?」


昨日言っていたように、

青峰っちとのこと、今日ケリつけるつもりなんだ…

そう望んでいたはずなのに、

手放しで喜べない気がするのはなぜだろう…

青峰っちに対する罪悪感、とか…?


でも、

彼女は青峰っちでなく、俺を選んでくれたんじゃないか。

俺と恋愛するつもりでいてくれているんだよね…?

信じてていいんだよね…?


「くん…?黄瀬くん!」

黄瀬「!…あっ、ごめん。ボーッとして…」

「黄瀬くんは、自分を責めるようなことはしなくていいんだからね。」

黄瀬「!…藍っち…」

「黄瀬くんにはまた、ちゃんと必ず、連絡するから。…」


今、不安でいっぱいなのは俺じゃなくて彼女だ。

俺は大して何もできない、役立たずだ。

俺は待つことしかできない。


青峰っち、ごめんね…

俺、本気で彼女のこと好きになっちゃったんス…

彼女と両想いになれたら、

許してくれる…?

認めてくれる…?


数分後、部室のドアの向こう側に気配を感じた俺達は、

あくまで自然にその場から離れた。

次顔を合わせる時は、

もう部員とマネージャーとしてだ。

俺も深呼吸をして、自分のロッカーを開けた。
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