KRB夢
□23th
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数日後…
彼女の怪我は徐々に治ってきてはいるらしいけど、
俺は毎日彼女の顔と様子を見るくらい、
心配はなかなか抑えられないでいた。
それに伴ってか、
前よりも彼女と話したり会う時間が
少し減ったように感じていた。
気のせいかもしれないけど、
どこか距離をとられているような感覚まで覚えた。
でも、相変わらず彼女は俺の前では笑ってくれていたし、
俺の心配を和らげようと明るく振舞ってくれていた。
彼女は優しい。
俺はまた、彼女を好きになった。
*
その日の昼休み。
俺は自販機で飲み物を買おうと、
鼻歌まじりに渡り廊下を歩いていた時のことだった。
反対側の校舎の角のところに、
彼女が座っているのを見つけた。
横顔だし、身体の部分は死角になっていたから
わかりにくいはずだけど見つけちゃう俺。
さすが彼女を愛し過ぎている!(笑)
声をかけようと思った、その時だった。
彼女ではない、誰か…男の声が聞こえた。
その声の主はすぐにわかった。
黒子「怪我の具合はどうですか?」
「ん、まあまあ。だんだんよくはなってきてる。松葉杖もとれたし。」
黒子「そうですか。でも完治するまでは無理は禁物ですよ。」
「そうね。ありがとう。」
俺は思わず身を隠すようにして、
彼女達から見えないところに立ち止まった。
黒子っちとこんなところで…
一体何の話…?
そういえば最近、二人でいるところよく見かけるな…
黒子「ところで…あれから何かありましたか?」
「…怪我した次の日、1人にたまたま会ってね…何事もなかったかのように避けられちゃった。」
黒子「ひどいですね…本当に。」
「…ね。」
1人…?
1人って何のことだ…?
避けられたって…
黒子「他には何もされてないですか?」
「…直接何かされてはいないけど、手紙はたまに入ってるかな。”マネージャー辞めろ”とか、”彼に近付くな”とかね(苦笑)」
黒子「…藍川さん、僕はやっぱり許せません。その人達を教えて下さい。」
「!…テツヤくん…」
黒子「やはりあの時、手を打っておくべきでした。藍川さんに怪我をさせて、それでも尚嫌がらせをしてくるなんて、本当に許せません。」
「ちょっ…ちょっと落ち着いて?テツヤくん。私なら大丈夫だから。そのうちほとぼりも冷めると思うから…」
黒子「黙って見てられるほど、僕は冷徹な人間じゃありません!もう我慢できません…っ」
「待って…!」
ゆづきは黒子の腕を掴んだ。
今にも走り出そうとしていた黒子を力づくで制止した。
「…っ」
黒子「藍川さん。何もしないままでは変わりませんよ。今のまま、藍川さんが傷つくのを見てろって言うんですか?」
「…」
黒子「…僕はそんなに頼りないですか?」
「っ…違う、よ。そうじゃないよ…」
黒子「…逆上されるのが、怖いですか?」
「…あの人達が、次何してきても私の気持ちは変わらない。ひどいのはあの人達。そう思うのに…っ」
黒子「…藍川さん…」
ゆづきは溢れそうになる涙を必死でこらえていた。
黒子はそんなゆづきの頭を優しく撫でるしかできずにいた。
「…私、そんなにいけないこと、してるのかな…?普通に恋してるだけが、そんなにいけないことかな…?」
黒子「いけなくないです。藍川さんは、何も悪くないです。」
「…彼を…っ、好きになっちゃいけなかったの…?」
黒子「いいえ。好きになっちゃいけない人なんていません。藍川さんは、黄瀬くんを好きでいていいんですよ。」
「っ…うん…!」
ザッ…
と足元で砂利の音がした。
その音に気付いた二人が見た先には、
黄瀬が立っていた。