KRB夢

□23th
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数日後…


彼女の怪我は徐々に治ってきてはいるらしいけど、

俺は毎日彼女の顔と様子を見るくらい、

心配はなかなか抑えられないでいた。

それに伴ってか、

前よりも彼女と話したり会う時間が

少し減ったように感じていた。

気のせいかもしれないけど、

どこか距離をとられているような感覚まで覚えた。

でも、相変わらず彼女は俺の前では笑ってくれていたし、

俺の心配を和らげようと明るく振舞ってくれていた。

彼女は優しい。

俺はまた、彼女を好きになった。



その日の昼休み。

俺は自販機で飲み物を買おうと、

鼻歌まじりに渡り廊下を歩いていた時のことだった。

反対側の校舎の角のところに、

彼女が座っているのを見つけた。

横顔だし、身体の部分は死角になっていたから

わかりにくいはずだけど見つけちゃう俺。

さすが彼女を愛し過ぎている!(笑)


声をかけようと思った、その時だった。

彼女ではない、誰か…男の声が聞こえた。

その声の主はすぐにわかった。


黒子「怪我の具合はどうですか?」

「ん、まあまあ。だんだんよくはなってきてる。松葉杖もとれたし。」

黒子「そうですか。でも完治するまでは無理は禁物ですよ。」

「そうね。ありがとう。」


俺は思わず身を隠すようにして、

彼女達から見えないところに立ち止まった。


黒子っちとこんなところで…

一体何の話…?

そういえば最近、二人でいるところよく見かけるな…


黒子「ところで…あれから何かありましたか?」

「…怪我した次の日、1人にたまたま会ってね…何事もなかったかのように避けられちゃった。」

黒子「ひどいですね…本当に。」

「…ね。」


1人…?

1人って何のことだ…?

避けられたって…


黒子「他には何もされてないですか?」

「…直接何かされてはいないけど、手紙はたまに入ってるかな。”マネージャー辞めろ”とか、”彼に近付くな”とかね(苦笑)」

黒子「…藍川さん、僕はやっぱり許せません。その人達を教えて下さい。」

「!…テツヤくん…」

黒子「やはりあの時、手を打っておくべきでした。藍川さんに怪我をさせて、それでも尚嫌がらせをしてくるなんて、本当に許せません。」

「ちょっ…ちょっと落ち着いて?テツヤくん。私なら大丈夫だから。そのうちほとぼりも冷めると思うから…」

黒子「黙って見てられるほど、僕は冷徹な人間じゃありません!もう我慢できません…っ」

「待って…!」


ゆづきは黒子の腕を掴んだ。

今にも走り出そうとしていた黒子を力づくで制止した。


「…っ」

黒子「藍川さん。何もしないままでは変わりませんよ。今のまま、藍川さんが傷つくのを見てろって言うんですか?」

「…」

黒子「…僕はそんなに頼りないですか?」

「っ…違う、よ。そうじゃないよ…」

黒子「…逆上されるのが、怖いですか?」

「…あの人達が、次何してきても私の気持ちは変わらない。ひどいのはあの人達。そう思うのに…っ」

黒子「…藍川さん…」


ゆづきは溢れそうになる涙を必死でこらえていた。

黒子はそんなゆづきの頭を優しく撫でるしかできずにいた。


「…私、そんなにいけないこと、してるのかな…?普通に恋してるだけが、そんなにいけないことかな…?」

黒子「いけなくないです。藍川さんは、何も悪くないです。」

「…彼を…っ、好きになっちゃいけなかったの…?」

黒子「いいえ。好きになっちゃいけない人なんていません。藍川さんは、黄瀬くんを好きでいていいんですよ。」

「っ…うん…!」


ザッ…

と足元で砂利の音がした。

その音に気付いた二人が見た先には、

黄瀬が立っていた。
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