えすえす！
□沈黙彼女妄想記１
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少し大きめのＴシャツと、
唇を彩るグロス。
あ、爪やすりも忘れずに。
バタ、と片手でドアを閉めると胸に爽快感。鍵をかける。
そうよ？あたしは今から旅行に行くの。
国内か世界かはまだ決めてないケド、色んな所に行くつもり。
温泉につかるもいいし、
ショッピングして、
ヒッチハイクもいいわね。
天然記念物にも会いたい。
珍しいお酒を嗅ぐのもいいな。あ、あと、海は制覇してやる。
･･･すんごく楽しみ！
「初音ー？起きなさーい！」
「･･･はぁ」
これが現実。
妄想旅行は計画だけでストップされる。また、朝が来てる。
あたしはごくごく平凡な、
『たちばな ういね』
に、戻っちゃう。つまんない、
･･･つまんないの。
いつもの夢の中では、
麦わら帽子をかぶっていて、
ふーんわりした、白いロングのワンピースを着ていて、
少しゴツい大きい旅行カバンを抱えているあたしは、
覚めてしまうと、
前髪がかぶっていて、
ダッサーなセーラー服を着て、ちっぽけな茶色い学生カバンを抱えている。
所詮、妄想旅行よ？
だけど、いつか、いつの日か、行ってやんだから!!
君は･･･あたしが動く瞬間を、
見逃さないでよ？
―end―