SS

□Your cute
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「─…Hey小十郎。お前はいつまで畑耕してれば気が済むんだ?」
「その質問、何回されたのですか…。先程も申したでしょう。後小一時間程ですよ。」

政宗様、と呼ばれる男は不貞腐れ、業とらしく音を立てて足を組んで座った。
通称、伊達政宗。その男は独眼竜として恐れられ、又、奥州筆頭として一国の主でもあった。
その傍に居るのは政宗の側近中の側近、片倉小十郎である。
…そして、伊達政宗の恋人、でもある。


「では、これにて失礼致します」

すっと音も無く立ったと思えば、袖を政宗がクイッと掴みそれを阻止していた姿が小十頭の目に入った。

「何か御用でしょうか?」
「Yes.もう少し此処に居ろよ、寂しいじゃねぇか」

小十郎は困ったかの様に、しかし嬉しながらも笑みを浮かべる。
だが、それは一瞬の事。
すぐに何時もの表情に戻った。そして、低く、冷静に一言。

「お仕事は終わりになられましたか?」

うっ……

政宗の顔が歪む。
一国の主と言う事は、民の命や家臣の命を背負っているという事。勿論、頭だからと言って何の仕事も無い訳ではない。

「はぁっ…やはり図星でしたか。いいですか、今日分の仕事を終えるまでこの小十郎めは会いに来ません。良いですか?」
「い、イヤに決まってるだろ!仕事なんてすぐ終わるぜ、だから別に良いだろー?」

まるでじゃれてくる犬や猫の様に縋り着いてくる主を見て、今度は低く一言。

「駄目に決まってるだろう。…それとも、お前は俺を怒らせてぇのか…?」
「Sorry!仕事するから怒んな、怖ぇっ!」
「判れば良いのです。では頑張って下さいませ」

政宗の顔は、小十郎が何時もの笑顔を向けても尚青ざめたままだ。

─小十郎を怒らせるのは、自爆行為にも等しい。
それは伊達軍の誰でも知っている常識中の常識。怒れば筆頭の伊達政宗よりも怖い、と有名なのだから。

「…はぁ、相変わらず怖ぇぜ…」

一つ溜息を洩らし、仕事を開始する主の姿を見届けた小十郎は畑へと戻った。

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