SS

□Your cute
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そして、小十郎の言った小一時間が経った頃、政宗は転寝をしていた。
そこに小十郎が失礼致します、と声を部屋の外からかける。
何時もなら「入れ」等反応を示してくれるのだが、今回は何の返事も無かった。
恐れ多くも部屋の戸を開けると、転寝をしている姿が目に入った。

「全く…政宗様!此処で寝てては風邪をお召しになられますぞ!」
「……ん…?…Oh─…こじゅ、ろ…」

眠そうに片目を手で擦る。
「…爆睡していたな」
そう確信する。

「ところで、仕事は終わったのですか?」
「勿論だぜ!こう見えても仕事は早く終わらせたんだからな!」

どうだと言わんばかりに笑顔になる主を見て、小十郎は小さな幼子をあやす様に頭を撫でた。

「わっ、小十郎…?」
「お偉いですな。何時もこの様だと私も苦労が少なくなるのですが。」
「そりゃ無理な話だぜ、それはお前が一番判ってるだろ?」
「ごもっともで。」

クスクスと笑う二人。

「小十郎、褒美はねぇのかよ?」
「子供じゃないのですから、要らないでしょうに。」
「俺子供だし」
「仕方のない御人だ…何が良いのですか?」

政宗に押され負け、苦笑交じりに笑顔を向ける。

「今日はずっと隣に居ろ、それで充分だぜ。…良いだろ?」
「仰せのままに。」

Yes!と南蛮語を発しながら抱きついてくる人を見ると、主ではない様な気がしてならない。
小十郎は何時も思っていた。

「こうして見ると、まるで猫の様ですね。可愛らしいですよ」
「なッ…!こ、小十郎っ!」

頬をかぁっと赤らめる主をその腹心はクツクツと笑う。

「何を、今更」
「それでも恥かしいんだよっ!」
「くっくっくっ…」

その二人の姿を、家臣達が覗いていたとかいないとか……。



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