雑SS

□仲良し家族
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トントン…




一定の間隔で野菜を切る音が台所からしてくるのを神楽は居間で定春の頭を撫でながら聞いていた。
何時もは食事の時間の始まる少し前に帰ってきて直ぐに食事を食べる事が多いのでこんな風に穏やかな空間で聞くのは久しぶりだった。
部屋の中を次第に食事のいい匂いが支配していく。お味噌汁のいい匂いに煮物の匂い、ご飯が炊ける匂い。どれもこれも日常的にあるはずなのにとても懐かしい。
「オィ、もう直ぐ出来るから準備しろ」
台所から声をかけられると立ち上がり駆け足でその人の下へいく。台所にいるのはこの家の主ではないが主である人間と深い関わりを持った人間。黒い着流しの上にピンク色のエプロンを身に着けて切った野菜を皿に盛り付けている男は真選組副長、土方十四郎だ。
「トシちゃーん。それ似合うネ」
名前を呼ばれて振り返った土方の身に着けているエプロンを指差せば微かに耳を赤くして眉を顰めた。
「なんでアイツはこんなエプロンしかもってネェんだよ…」
「それ姐御がくれたものネ、姉御が来てる時にそれ使ってないと怒られるヨ」
戸棚から箸や取り皿を取り出すと居間のテーブルの上に並べていく。出されているのは二人分だけ。
実は昼前に銀時はパチンコへ、新八はお妙の用事で今日は来れないと朝方に連絡が入り定春の散歩から帰ってきた神楽は腹を空かせていたのだが食べる物がない。そこへ丁度非番だとやってきた土方が捕まったのだ。事情を聞いて外に食べに行くか?と言われたが神楽は土方の手料理が食べてみたいとお願いした、今でこそ支給を雇っているが昔は男所帯で食事は当番制と言う事もありそれなりに作れると前に銀時と話しているのを聞いていた。一瞬渋って見せたが神楽の子供らしいお願いに土方は直ぐに折れて二人で昼のスーパーに買出しに行った。
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