花街絵巻

□輝くは蝶なりてもゆる想い(三章)
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彼の人が訪れてから早半月の日が過ぎていた。変わらぬ毎日を過ごし時間があれば街を部屋の窓から見下ろす日々を過ごす。
街の外では攘夷浪士による事件が多発している為か花街の客足も少しずつ引き売り上げに響いていたがそれより気になるのは土方の存在。真選組で働いている彼はきっと毎日浪士を追っているのであろう。
「…蝶は舞い踊り、鳥は詩唄い」
片手を扇を持つような形にしゆっくり型にそって動かしていく。長く踊り続けた舞いは既に体に染み着き考えるよりも勝手に動く程だ。
「月に浮かびしは兎か姫か…」
ゴトッと廊下で物が倒れる音が聞こえ口を閉ざしそちらをジッと見つめる。
そして音もなく開かれた襖の向こうにいたのは派手な女が身につけるであろう柄の着流しを身にまとった男とも女ともとれる中性的な人間がいた。その人間を見た銀は目を見開き声も出ずに口を動かすだけ。
「よぉ白夜叉…」
ソイツは下げていた頭を上げて真っ直ぐに銀と視線を合わせニヤリと含みのある笑みを浮かべて見せる。
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