黒と白の鍵合わせ

□貴方に残したいものは残酷な傷
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本当に一瞬の事だった

背中を大きく切りつけられ流れ出す血が飛沫を上げ総悟の体は地に伏した。

『総悟ーーーーッ』

遠くなる相手の声に反して抱き上げる手の熱さが心地よく感じる。
このまま死ぬのだ…はっきりと感じる死の感覚に恐怖など感じなかった。寧ろ怖いと感じるのはこの手に触れる事が出来なくなる事。何気ない会話で触れ合う手、自分を見つめる瞳、名を呼ぶ声。それら全てを手放さなければならないのだ。

『死にたくねェよ…ひじ…か…たさん』

出した声は掠れ殆ど音にならなかったが抱き上げていた土方の耳にはしっかりと聞こえていた。

『死ぬわけねぇーだろッ、憎たらしいくらい生き続けろや!』

殆ど聞き取れないながらも何となく意味を理解しうっすらと笑みを浮かべた。
この人が自分が死ぬのを望んでいない、それだけで嬉しさがこみ上げてくる。きっと俺の死は彼の中で深く傷を作り一生消える事無く残るに違いない、俺と言う¨沖田総悟¨という傷を作る事が出来るのだ。誰にも消すことの出来ない傷。
何故か訪れた恐怖も消え去る、あぁ自分はもう消えるのだ。

何も感じない

痛みも

恐怖も

でも一言だけ言いたかった
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