雑SS

□リング(前編)
5ページ/10ページ




週に一度時間など決めていないが二人だけの時間があった。
短い逢瀬の間だけ何時もの喧嘩腰は形を潜め世間一般と変わらぬ恋人へと変わる。
触れる唇も肌も熱も全て共有し確かめ合う、今自分と相手が同じ時間を生きているのだと。
「トシ…明日大物捕りらしいじゃん」
隣で煙草を吹かすのを見つめながら呟いた。
「誰から聞いた?」
「総一郎君?」
「総悟な…」
間違えた名前を律儀に訂正し紫煙を吐き出す。
相手は最近この辺りを根城にしいくつもの事件を起こしている過激派の連中らしい。この前も大使館の周囲で爆弾事件が起こった。
「まぁ何時もの事だろうけどきーつけろよ。最近じゃあ銃とか平然と使う奴ばっかみたいだしよ」
土方のいる真撰組は剣一本で道を切り開く正に地球に残された最後の侍集団。どんなに剣術が優れていても天人の持ち込んだ銃器には勝てない。最近じゃあ沖田君を筆頭にバズーカぶっ放しちゃってるみたいだけどね。
「あぁ、肝に銘じておく」



次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ