黒と白の鍵合わせ

□Pray
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「くっ、ぁあああ!!」
俺は苦しさから飛び起きるとそこは何時もの見慣れた自分の部屋。強張った身体を抱き締めるとまだ強く脈打つ心臓の音が体中に反響する。
今日は神楽は新八の家に泊まりに行っているので誰も居ない、人の気配のしない家の中がこんなにも寂しいとはまだ一人で居た頃には思わなかった。あぁ、自分は人と居る事に慣れてしまったのだ、だからこんな時に人恋しく感じてしまうに違いない。
こんな夜更けに新八のところに行く訳にもいかないし誰かと飲みに行くにしても元手がない。
とりあえず気ばなしに外を散歩でもするかと着ていた寝巻きを脱ぎ捨て何時もの着物に袖を通した。
外に出れば歌舞伎町は相変わらず煌びやかで人で賑わっている。その間を縫う様に歩いていくと時々目にするオヤジの後姿が目に入った。
「よぉ、長谷川さん」
「んっ?何だ銀さんじゃねーか」
最近ではお互いパチンコ仲間であり飲み仲間としてそれなりの交遊を持っている。
「こんな所でなぁにやってんの?」
自分と同じでいつも金に困っている人間がそうそう飲みにいけるはずも無いのは知っているし何より飲みに行く時はたいてい声を掛けてくれる。
「今やってるバイトの店で酒が切れたから買出しね」
「ふぅーん、それじゃしゃーねぇか。まぁ頑張ってよ、じゃぁね」
長谷川を置いて俺はさっさと先に進むと直に歌舞伎町を抜けて人の少ない路地に出てしまった。こういう道はあんまり夜に歩くと変なものに遭遇する率が高い、周りに気を配りながらそそくさとその路地を抜けようとした瞬間目の前に男が吹っ飛んできた。突然の事に避けきれずその男と一緒に元の路地に転がる事になってしまった。
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